腎細胞癌において、探針エレクトロスプレーと、それにより得られた質量スペクトルを分析するための帰納的学習機械とを組み合わせることで、検体採取後に短時間で癌診断ができる可能性が示された。今回は淡明細胞型腎細胞癌での分析結果が報告された。4月25日から28日に札幌市で開催されている第101回日本泌尿器科学会総会で、山梨大学大学院医学工学総合研究部・泌尿器科学の山岸敬氏らの研究グループが発表した。

 エレクトロスプレーは、キャピラリーの先につけた液体試料に、電圧をかけることでイオン化してスプレーする技術。探針エレクトロスプレー(PESI:Probe ElectroSpray Ionization)は、キャピラリーのかわりに、細い金属探針を使用することで、少量の検体から、前処理をすることなく、短時間で質量スペクトルを得ることができる。検体採取は数pLレベルと微量のため侵襲性が低く、迅速で簡便といった「臨床で重視される特徴をもつ」という。

 研究グループは、このPESIで得られた質量スペクトルを分析するため、帰納的学習機械(dPLRM:dual Penalized Logistic Regression Machine)を用いた。dPLRMは多数のサンプルによるデータベースを基に、試料の質量スペクトルを解析するもので、ロジスティック回帰モデルを用い、測定を重ねるたびに学習するという特徴がある。
 
 今回はPESIとdPLRMを組み合わせ、腎細胞癌組織と正常腎組織を比較分析した結果を報告した。

 分析は、腎摘除術や腎部分切除術から採取された49検体で行われた。うち正常腎組織は19検体、腎細胞癌組織(淡明細胞型腎細胞癌)は30検体。採取された検体は-80℃で冷凍保存された。

 PESIで組織を測定した結果、淡明細胞型腎細胞では正常腎組織とは明らかに異なる質量スペクトルを示した。淡明細胞型腎細胞癌にはトリアシルグリセロールが蓄積していることから、正常腎組織にはない特異的なピークが認められたと山岸氏は解説した。

 得られた質量スペクトルのデータはdPLRMで解析され、各検体について癌と非癌の状態が確率で提示された。その結果、正常腎組織では非癌の割合が高く、腎細胞癌組織では癌の割合が高いことが示され、閾値を50%としたところ、癌と非癌の正答率は100%となった。

 この結果から、「探針エレクトロスプレー法による質量分析とdPLRMを組み合わせることで、低侵襲で、前処理することなく、迅速に、淡明細胞型腎細胞癌の診断が可能であり、サンプルデータを増加させることで、診断率を向上させることができる」とした。なお腎細胞癌以外では、肝細胞癌と消化管癌で検討されているという。