ロボット支援前立腺全摘除術(RALP)と腹腔鏡手術(LRP)の手術成績の比較から、断端陽性率(PSM)に有意差はないが、断端陽性部位はRALPでは後面・側壁に、LRPでは尖部に多く、相違が認められる結果が示された。ただし、RALPでは経験症例数の増加に伴ってPSMが低下し、特に後面・側壁で顕著であることもわかった。4月25日から28日まで札幌市で開催されている第101回日本泌尿器科学会総会で、名古屋市立大学大学院医学研究科病態外科学講座腎・泌尿器科学分野の戸澤啓一氏が発表した。

 RALPの利点は、鉗子が広い可動域を持ち、3Dの鮮明な視野のもとで繊細な手術操作が可能なことである。この利点からRALPの手術成績は開腹手術、LRPと比べて優れるとする報告が多い。

 戸澤氏らは2000年9月より、Montsouris method(後方アプローチ)でLRPを開始し、2011年5月からはLRPと同様のアプローチでRALPを開始した。今回の検討では、LRPとRALPの手術成績を比較し、長所と短所を明らかにするとともに、RALP導入初期の問題点を探ることを目的とした。

 対象は、名古屋市立大学病院において2012年9月までに行われたLRP551人とRALP153人。手術時間、出血量、術後バルン留置期間、術後入院期間、合併症、PSM、断端陽性部位を比較した。

 患者背景では、LRP群とRALP群に有意差はなかった。年齢中央値はそれぞれ67.5歳と67歳、術前病期で最も多かったのは、LRP群ではT1cで49.4%、RALP群ではT2aで31.4%だった。LRP群とRALP群において、PSA平均値はそれぞれ9.1と9.2だった。

 手術成績では、手術時間、出血量、術後入院期間がRALP群で有意に勝っていた。LRP群とRALP群において、平均手術時間はそれぞれ296.4分と161.8分(p=0.01)、平均出血量は541.3mLと316.1mL(p=0.04)、平均術後入院期間は14.8日と10.2日(p=0.03)だった。PSMは、LRP群30.6%(167人)、RALP群27.5%(42人)で有意差は認めなかった(p=0.26)。

 断端陽性部位は、LRP群とRALP群で有意な相違が認められた(p=0.037)。LRP群では尖部が58.0%(97/167)で最も多く、RALP群では後面・側壁が50%(21/42)で最も多かった。RALP群では、経験症例数の増加に伴ってPSMの低下がみられ、特に後面・側壁で顕著だった。

 LRP群とRALP群で断端陽性部位が異なる原因として、第1に、RALPでは触覚がないことがあげられ、カウンタートラクション(組織の牽引)が強すぎて組織の断裂を生じ、後面・側壁でのPSMの上昇につながったと考えられた。これは病理組織でも多く確認された。第2に、鮮明な拡大視野が得られるために、被膜への切り込みが生じることが考えられた。

 戸澤氏は、RALPにおけるPSMを低下させるには、「十分なトレーニングを行い、触覚がないという機器の特性を熟知すること、鉗子の力の加わり方を体感すること、カウンタートラクションのかけ過ぎに注意することが必要」、また、解剖を熟知することと、GEARS(Global Evaluative Assessment of Robotic Skills)を用いた技術評価も必要であるとした。