腎細胞癌に対する治療は転移があっても原発巣を外科的に切除することが基本であるため、転移があり、切除のみでは予後改善につながらない場合に限って、術前治療は行われるべきだろう――。4月27日から30日まで盛岡市で開催された第98回日本泌尿器科学会総会のパネルディスカッションで、術前治療が議論され、適応について一定の見解が得られた。その中で、山形大学医学腎泌尿器外科学の加藤智幸氏は、分子標的薬による術前治療の結果を報告した。

 セッションの冒頭、術前治療は大きくはneoadjuvant療法とinduction療法、presurgical療法の3つに分けられることが確認された。neoadjuvant療法は「転移のない原発巣に対して術前にdown sizing、down stagingをする治療法」、induction療法は「転移巣があるが原発巣の切除は可能な場合の治療法」、presurgical療法は「切除不能な場合に術前治療により手術ができる状態にする治療法」とそれぞれ定義された。

 加藤氏は、presurgical療法の成績を報告した。山形大学で2010年3月までに分子標的薬(ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムスなど)を使用した患者は55人。このうちpresurgical療法を施行されたのは8人で、実際に手術を行ったのは5人(62.5%)だった。ソラフェニブによる治療が1人、スニチニブ治療が4人で、術前内服期間は84〜308日。原発巣に対する投与が4人、腹部リンパ節への投与が1人。腫瘍縮小率は6.2〜26%だった。

 手術は、腎摘除術が2人、腎摘除術+下大静脈内腫瘍塞栓除去術が1人、腎部分切除が1人、転移巣切除(腹部リンパ節)が1人。手術時間と出血量は平均を上回っていた。術後合併症は3人で、グレード1の胸水、グレード2の肺炎、グレード3のイレウスが認められたが、保存的療法で回復した。創傷治癒遅延はなく、「分子標的薬の影響と考えられる重篤なものはなかった」と加藤氏。転帰はNED(no evidence of disease)が3人だが、AWD(alive with disease)の2人(骨転移、肺転移)には、分子標的薬やサイトカイン療法が行われた。

 これらの結果から加藤氏は、「presurgical療法では、ベネフィットがある症例もあるが、効果がなかった場合のことも念頭において症例を選択することが重要である」と述べた。そして、「原則として有転移症例が対象で、転移がない場合は単腎や両側腎細胞癌で、腫瘍の縮小が腎機能温存につながる症例に限定すべきであろう」と話した。

 ディスカッションの中でも、転移があり切除不能な場合が術前治療の第一の適応であり、有転移で切除可能例では手術のみでは予後が悪い場合、poor riskで急激な進行が予測される場合に限って適応になること、転移のない原発巣に対しては、単腎や両側腎癌の場合は術前療法の適応になることが、現時点のコンセンサスとして得られた。