腹腔鏡下前立腺全摘除術の未経験施設においても、米Intuitive Surgical社のda Vinci S-HDシステムによるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術RALP)は、スムーズで安全に導入できる可能性が示された。4月27日から30日まで盛岡市で開催される第98回日本泌尿器科学会総会で、藤田保健衛生大学腎泌尿器外科学の丸山高広氏が発表した。

 丸山氏らは、腹腔鏡下前立腺全摘除術を施行していない同施設において、da Vinci S-HDシステムを用いたRALPを導入した。同施設のda Vinci S-HDは国内に導入されたda Vinciの中では最新型で、 名称のうち「HD」はhigh definition(高解像度)を指す。丸山氏は、2010年3月末までに経験した14人の前立腺癌患者の手術成績について報告した。

 対象の年齢中央値は64.5歳、PSAの中央値は8.8ng/mLだった。臨床病期はT1cが4人、T2aが7人、T2bが3人だった。Gleason scoreは「3+3=6」が8人、「3+4=7」が3人、「4+3=7」が1人、「4+4=8」が2人だった。前立腺の重量の中央値は32.0mLだった。

 手術は、約30度の頭低位で施行された。ポートは計6本で、カメラポート1本、da Vinci用ポート3本、助手用ポート2本を使用した。前立腺摘除は経腹膜的順行性に行われ、病期により神経温存が行われた。

 手術時間の中央値は5時間39分(範囲:3時間57分〜9時間30分)、手術時間からコンソール外での時間を引いたコンソール時間の中央値は4時間20分(範囲:2時間46分〜8時間35分)だった。出血量(尿込み)の中央値は475mL(範囲:32〜1729mL)だった。全例ロボット手術で完遂でき、開腹手術への移行はなく、同種血輸血例もなかった。

 現在同科では、白木良一氏と丸山氏の2人が術者としてこの手術を行っている。3〜4例目からはコンソール時間が短縮し、約4時間で安定するとともに、出血量も減少している。しかし丸山氏は、「まだLearning curveとは言えないと思っている」と評価した。同科では2例目までは東京医科大学の医師の指導を受けている。

 術後の尿道カテーテルの留置期間の中央値は6.0日、入院期間の中央値は9.0日だった。

 有害事象としては、術中の膀胱穿孔が1人に発生したが、術中の操作で閉創した。術後の下肢運動傷害を認めた1人はリハビリテーションで改善した。また、術後出血による尿道カテーテル閉塞を1人に認めた。重篤な合併症は、認められなかった。

 病理検査の結果、pT2aが5人、pT2bが6人、pT3aが2人で、術前にホルモン療法を行った1人には悪性所見が認められなかった。術後切除断端陽性は8人に認められたが、被膜浸潤の2人を除いた全ての症例でPSA値の陰性化が認められた。

 術後の尿失禁、性機能は比較的良好であった。