術前化学療法では治療効果も重要だが、速やかに根治術に移行できるよう毒性をできるだけ抑える必要がある。転移性膀胱癌に対する術前化学療法としてシスプラチンゲムシタビンの併用療法を行ったところ、観察期間は短いものの、高い有効性と安全性が示された。4月16〜19日に岡山市で開催されている第97回日本泌尿器科学会総会のポスターセッションで、国立がんセンター東病院骨盤外科の田中俊之氏が同院化学療法科の長井俊治氏、松原伸晃氏らと行った検討の成果として報告した。

 転移性膀胱癌に対するシスプラチンとゲムシタビンの併用療法については、メトトレキサート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンの4剤併用のM-VAC療法と比べ、生存期間は同等だが、毒性や安全性は優れていることがすでに示されている。

 田中氏らが対象としたのは、病理学的または画像上に筋層浸潤を認める膀胱癌、または病理学的に尿路上皮癌を認める男性患者7人(平均年齢60.4歳)。臨床病期はT2〜4a、N0〜1、M0で、PSは0〜1だった。

 術前化学療法として、シスプラチン70mg/m2をDay1に、ゲムシタビン1000mg/m2をDay1、8、15に投与し、3〜4コース施行した。平均観察期間は14.1(7〜21)カ月であった。

 シェーマとして、経尿道的腫瘍切除術(TUR-BT)で浸潤性膀胱癌を確認後、前述の術前化学療法を行い、膀胱鏡とMRIで評価する。その後、根治的膀胱摘除を行う。2コースでMRIによる効果判定で縮小が認められない場合は他の治療法を検討した。

 臨床的な抗腫瘍効果をみると、臨床病期分類でステージ3の4人中3人が腫瘍性病変を認めず(CR)、1人が長径30%以上縮小(PR)し、奏効率は100%であった。同様にステージ4の3人中2人がCR、1人がPRを示し、奏効率はこちらも100%であった。病理学的な抗腫瘍効果も、奏効率はいずれのステージも100%となった。

 グレード3以上の有害事象として、白血球減少を2人、貧血を3人、血小板減少を4人に認め、特に血小板減少では3人がグレード4であったため、Day15のゲムシタビンはスキップしたが、有害事象のため完遂できなかったケースはなかった。

 根治術の術後合併症として、膀胱全摘後に代用膀胱とした2人に、わずかな新膀胱尿道吻合部のリークを認めたが、経過観察のみで軽快した。

 術前化学療法を施行した症例としなかった症例で根治術前血液検査所見、手術時間、術後在院日数、周術期輸血を比較すると、術前化学療法を施行した症例で自己血輸血が困難であった点を除き、大きな差はなかった。シスプラチンとゲムシタビンの併用療法は、術前化学療法として許容できると考えられた。

 田中氏は「観察期間が短いため、長期観察の検討が必要。今後、シスプラチンとゲムシタビンの併用療法は膀胱温存についても念頭におきながら、術前に積極的に取り入れていくべきと考える」と話した。