血管内皮増殖因子受容体VEGFR:vascular endothelial growth factor receptor)1陽性の骨髄由来細胞は、前立腺全摘術後のPSA再発を予測できるのではないか。第97回日本泌尿器科学会総会で、大阪大学泌尿器科学の中山雅志氏はこう述べた。

 中山氏らが研究を行ったきっかけは、近年の研究で、VEGFR1陽性の骨髄由来細胞が、癌の転移が生じる前に転移巣に現れ、癌細胞が転移する際の“足場”になる可能性があるという報告がなされたことだ。

 実際に前立腺癌細胞はVEGFを発現しており、また血中のVEGF値は転移がある場合に限局性前立腺癌よりも高値を示し、手術後には低下することが既に知られている。そこで中山氏らは、VEGFR1陽性細胞の存在が転移の前病変とみなせるのならば、PSA再発の予測因子となるかもしれないと考え、以下の検討を行った。

 対象としたのは前立腺癌で前立腺全摘術を行った95人。リンパ節転移の有無で2群に分け、それぞれの骨盤リンパ節を抗VEGFR1抗体で免疫組織染色し、陽性細胞の複数個の集簇を認めた場合に陽性と判定した。「1個の細胞が染まっている場合に陽性とするかどうかの判定は難しかったが、2個以上染まっている場合に陽性とみなすようにした」と中山氏は振り返る。PSA再発は、PSA>0.2ng/mLとした。

 その結果、リンパ節転移なしの79人ではVEGFR1陽性率が46.8%(37人)だったのに対し、リンパ節転移ありの16人ではVEGFR1陽性率が100%だった。さらに、リンパ節転移なしの79人のうち、かつ外科的切除断端が陰性だった66人を対象に、PSA再発率とVEGFR1陽性率の関連を検討した。

 VEGFR1陽性だったのは27人、VEGFR1陰性だったのは39人で、PSA再発率と明らかに相関していた(p=0.0002)。中山氏は「もともと、リンパ節転移がある可能性が高い患者を集めたという経緯もあり、対象患者に偏りはある。さらに大規模な試験を組んで検討を進める必要はあるが、VEGFR1陽性細胞の存在はPSA再発の予測因子となり得ると思われる」と話した。