胃切除例において血中循環癌細胞(CTC)の有無は予後予測因子であることが示された。また、CTCにおけるHER2の量的評価ができる可能性が示唆された。4月12日から千葉県幕張で開催された第112回日本外科学会定期学術集会で、鹿児島大学分子応用外科学の上之園芳一氏が発表した。

 今回、同氏らは、CTCを形態学的に検出可能なCell Searchシステムを用いて、胃癌症例におけるCTC検出と再発予測および化学療法の評価における有用性を検討した。また、CTCにおけるHER2発現を評価し、組織学的HER2発現の評価結果との相関を解析した。

 対象は胃切除141例と切除不能・再発胃癌82例の計223例。胃切除例におけるpT1は61例、pT2は18例、pT3は34例、pT4は28例で、平均観察期間は837日だった。

 CTCについては、7.5mLの血液をサンプルとして、サイトケラチン、核染色が陽性であってCD45が陽性ではない(白血球ではない)ものをCTCと定義した。

 CTCの検出率は、切除胃癌で16例(11.3%)、切除不能・再発胃癌で47例(57.3%)。健常者15例ではCTCは全例で0個だったが、胃切除例では1〜20個程度、切除不能・再発例では1〜100個以上だった。

 胃切除例について、CTC陽性例と陰性例に分けて比較した結果、CTC陽性例では、T3、T4症例が多く、N3症例が多かった。リンパ管侵襲や脈管侵襲も有意に多かった。しかし、性別や年齢、組織型、血清CAE値、血清CA19-9値には有意差は認められなかった。

 解析対象である223例について、CTC陽性例と陰性例について予後を比較した結果、CTC陽性例が有意に全生存率が低かった。また、切除例において、無再発生存期間、5年生存率を検討した結果においても、CTC陽性例は陰性例と比べて有意に低かった。

 胃切除例における単変量、多変量解析を行った結果では、単変量解析ではT因子、N因子、M因子、リンパ管侵襲、脈管侵襲とともにCTCが有意な因子として見いだされたが、多変量解析を行った結果、CTCのみが有意な因子として残った。

 次に、胃癌と診断を受け、未治療の組織学的HER2検査を行った19例(胃切除7例、切除不能・再発12例)について、CTCにおけるHER2発現の解析を行った。

 免疫染色で3+または2+かつFISH陽性と組織学的HER2検査で陽性だったのは19例中3例だった。CTCが検出されたのは11例(57.9%)で、うちCTC-HER2陽性だったのは5例(45.5%)だった。5例を詳細に見てみると、血液7.5mL中にCTC数が1個でHER2陽性だったケースやCTC数が13個でHER2陽性CTC数が6個だったケース、CTC数が2個でHER2陽性CTCが1個だったケース、CTC数が33個でHER2陽性CTC数が1個だったケースがあった。

 19例についてIHC検査とCTC-HER2検査の相関について解析した結果、IHC検査で3+かつCTC-HER2陽性だったのは1例、IHC検査で3+かつCTC-HER2陰性だったのは2例だった。CTC-HER2陽性でIHC 0だったのは1例、IHC 1+だったのは3例、2+でFISH陰性は0例、2+でFISH陽性例は0例だった。なお、CTC-HER2陰性でICH 0は3例、IHC 1+は1例だった。

 これらの結果から上之園氏は、CTCの有無は独立した予後予測因子であり、CTC陽性例は術前化学療法を含めた集学的治療が必要であること、CTCにおけるHER2検査は量的評価が可能で、組織学的HER2検査で陰性であっても抗HER2治療薬の適応があるかどうかを判断するための検査になる可能性があると締めくくった。