ステージIV乳癌において、原発巣を切除した症例のほうが切除無しの症例よりも予後が良好な可能性が示された。九州がんセンター乳腺科の大野真司氏は、単純な比較は難しいとしつつも、「原発巣を切除できる状態にするために、薬物療法と組み合わせて治療を考えていくことが重要かもしれない」との考え方を示した。4月12日から千葉県千葉市で開催された第112回日本外科学会定期学術集会で発表した。

 ステージIV乳癌における原発巣切除については、日本乳癌学会の診療ガイドラインで推奨グレードC1(細心の注意のもと行うことを考慮してもよい)としている。また転移巣の外科的切除については、限られたケースを除き勧められないとし、推奨グレードC2だ。

 大野氏は、ステージIV乳癌の現状を明らかにするため、同科で治療したステージIV乳癌症例と再発乳癌症例の生物学的特徴と治療成績について解析を行った。対象は、1990年から2011年に同科で治療したステージIVの原発性乳癌178例と、1992〜2011年に再発と診断され治療を受けた再発乳癌症例502例。これまでの実績を調べてみると、2000年以前は原発巣を切除した例が80.4%だったが、2000年以降は減少しており、原発巣を切除した例は24〜32%と低下していた。

 年代別にステージIV乳癌の3年生存率をみると、1990〜2000年は42.0%、2001〜2005年は56.4%、2006〜2011年は70.4%となり、年代を追うごとに治療成績の向上が見られた。

 サブタイプ分類を調べると、ステージIVはステージI〜IIIと比べ、HER2陽性症例やトリプルネガティブ症例が多い傾向が見られた。また、ステージIVにおける予後は、サブタイプによる差は認められなかった。

 1990年から2011年までに原発巣切除した症例の3年生存率は66.1%だったのに対し、切除しなかった症例は51.2%となった。ただし、この結果について大野氏は「切除ができた症例というバイアスがかかっているので、単純に比較するのは難しい」と補足した。

 同様に再発乳癌についても解析を行い、ステージIV乳癌と再発乳癌の予後を比較したところ、有意差はなかった。トリプルネガティブ症例では再発乳癌症例の方がステージIVよりも予後不良だった。一方、ホルモン受容体(HR)陽性やHER2陽性乳癌症例ではステージIVと再発乳癌に差はなかった。

 2009〜2011年の再発例におけるHR陽性HER2陰性症例の割合は72.6%となり、2001〜2008年の56.1%よりも増加した。一方、HR陽性HER2陽性、HR陰性HER2陽性の割合は、ステージIVではそれぞれ12.6%、12.6%、再発(2001〜2008年)では14.3%、11.0%だったが、再発(2009〜2011年)は5.4%、5.3%となり、およそ半分に減少した。この結果について大野氏は、トラスツズマブによる影響が考えられると指摘した。

 大野氏は、ステージIV症例では原発巣切除例で予後良好だった症例が多かったことから「原発巣の切除は必要なのかもしれない。原発巣を切除できる状態にもっていくためにも、薬物療法と組み合わせて治療を考えていくことが重要だ」との考え方を示した。また、新規薬剤の導入や原発巣切除の適応とタイミングを明らかにするためには、臨床試験が必要となると語った。