開腹手術での創感染発生率は9.2%だったのに対し、腹腔境下手術での創感染は3.1%と有意に少なかったことが示された。4月12日から千葉県千葉市で開催された第112回日本外科学会定期学術集会で、がん研有明病院消化器センター外科の池田篤志氏が報告した。

 大腸手術では手術部位感染(SSI)が高率で起こることが報告されている。ただ、そのうち腹腔鏡下手術のSSI発生率に関しては、開腹手術と同程度とした報告がある一方、開腹手術よりも創感染頻度が低いという報告もあり、一定の見解が得られていない。

 そこで池田氏らは、進行癌や直腸癌を含めた腹腔鏡下大腸手術におけるSSI発生の現状を調べた。

 対象は、2005年7月から2011年12月に同院で定時腹腔鏡下大腸切除手術を行った全症例2047例。緊急手術や大腸非切除症例、開腹移行例は除外した。

 患者背景をみると、平均年齢は64歳、男性比率は56%、手術部位は結腸が66%(1348例)、直腸が34%(699例)。術式では、右結腸が26%、左結腸が40%、低位前方切除が25%、括約筋間切除が4.8%、直腸切断が3.8%。ステージ0が4.6%、Iが34%、IIが23%、IIIが30%、IVが7.8%だった。手術時間は結腸が195分、直腸が254分だった。

 初発大腸癌手術において腹腔鏡下手術が占める割合を見ると、2005年は32%で、その後、年々増加し、2011年には93%となった。それに伴い、全SSI発生率は減少する傾向を見せ、2005年が12.8%だったのに対し、2011年は4.5%だった。

 全SSI発生率は、結腸切除例が2.45%、直腸切除例が6.86%で、直腸切除例でのSSI発生率が有意に高かった(p<0.0001)。

 SSIの種類別に発生率を見ると、切開創SSI発生率は結腸切除例が1.7%、直腸切除例が4.3%。縫合不全による発生率は結腸切除例が0.45%、直腸切除例が2.6%となり、どちらも有意差がみられた。一方、遺残膿瘍の発生率は結腸切除例が0.30%、直腸切除例が0.29%となり、有意差はなかった。
 
 SSI発生率の高かった直腸切除例について詳細を調べたところ、直腸切断術では切開創SSI発生率が29.5%と高かった。

 創感染に関して単変量解析を行ったところ、結腸切除例では有意な因子は抽出されなかったが、直腸切除例では出血量、手術時間、BMIが有意な因子として抽出された。出血量25mL以上、手術時間が300分以上、BMIが25以上の直腸切除例では有意に創感染が多かった。

 開腹手術と腹腔鏡下手術におけるSSI発生率を比較したところ、創感染発生率は開腹手術で9.2%だったのに対し、腹腔境下手術では3.1%と有意差が見られた(p<0.001)。

 池田氏は、腹腔鏡下大腸癌手術のSSIは進行癌・直腸癌ともに良好に制御されていたほか、腹腔鏡下手術の増加に伴いSSIは減少していたと述べ、「今後、日本で腹腔鏡下手術が増加するに伴い、SSIの減少が期待される」と語った。