大腸癌術後補助療法における個別化治療を目指す多施設共同大規模コホート研究B-CAST(Biomarker Cohort study:Adjuvant chemotherapy for Stage III colon cancer)の登録が2012年3月に終了し、2061例が集積されたことがわかった。4月12日から14日まで千葉市で開催された第112回日本外科学会定期学術集会で、東京医科歯科大学大学院腫瘍外科学の石黒めぐみ氏が発表した。
 
 わが国では大腸癌術後補助化学療法として、5-FU/l-LV、UFT/LV、カペシタビンなど、複数のフッ化ピリミジン系薬剤が使用されている。フッ化ピリミジンの代謝や作用に関係するチミジンホスホリラーゼ(TP)やジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)などの酵素による効果予測や副作用予測が期待されているが、臨床応用には至っていない。問題点として、後ろ向きの研究が中心であったこと、単施設の研究が多く検討された症例数が少ないこと、測定システムの汎用性などがあり、これらの点を解決するため大規模な前向きコホート研究が計画された。

 フッ化ピリミジン系薬剤の個別化治療を目指す多施設共同前向きコホート研究、「治癒切除結腸癌(Stage III)を対象としたフッ化ピリミジン系薬剤を用いた術後補助化学療法の個別化治療に関するコホート研究」(研究略称:B-CAST)は、2009年4月に登録が開始された。
 
 対象は、組織学的Stage IIIの結腸癌・直腸S状部癌で根治度Aの手術症例。治療レジメンは規定せず、投与量や有害事象の頻度、程度などの治療データを収集する。また登録終了後1、3、5年時に予後(再発の有無、生死)を調査する。B-CASTでは、これらの臨床データと、原発巣切除標本のバイオマーカーの測定結果との関連を検討する。
 
 バイオマーカーの測定では、原発巣切除標本から5mm角の組織を2個採取し、凍結検体として回収する。ELISA法でTP、DPD、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)のタンパク発現量を、リアルタイムPCR法でTP、DPD、チミジル酸シンターゼ(TS)、オロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)のmRNA発現量を測定する。
 
 凍結検体では回収・保管が難しいが、B-CASTでは工夫を加え、多くの施設での凍結検体の採取と保管を可能にした。タンパク解析用の検体では、液体窒素を使用せず、所定のチューブに入れてそのまま冷凍する。mRNA解析用の検体では、RNA later溶液を使用し、エアシート袋に入れることでタンパク解析用の検体と冷凍庫に入れるタイミングを揃えた。またxenograftを用いた基礎検討の結果から、−20℃の家庭用冷凍庫でも保存可能とした。さらに凍結検体の回収を移送業者に委託することで、全国からの回収を可能にした。登録・症例情報の収集はWebシステムを介し、先端医療振興財団臨床研究情報センターのデータセンターで行われた。

 2012年3月末までに全国の217施設から2061例が登録された。目標の3000例には届かなかったが、十分な検出力があると判断され、登録は終了となった。現在までに約1700例の測定が行われている。

 石黒氏は「検体移送、データセンターなどの研究実施体制を整備することにより、凍結検体を用いた大規模な多施設共同トランスレーショナル・リサーチが可能となった。本研究の結果が得られても、汎用性やコストなど実用化に向けてのハードルはあるが、はずみとなる大規模なデータが提供できると考えている」と話した。