血中の遊離癌細胞(CTC)の評価は、腹膜転移の予測因子であり、非侵襲的な診断法として有効である可能性が示唆された。4月12日から千葉県幕張で開催された第112回日本外科学会定期学術集会で、鹿児島大学腫瘍制御学消化器外科の原口尚士氏が発表した。

 同施設でのデータによると、胃癌切除141例中、CTC陽性例は11.3%で、CTC陰性例に比べて有意に予後が不良だった。また、切除不能・再発82例中、CTC陽性例は57.3%で、こちらもCTC陰性例に比べて有意に予後が悪かった。また、胃癌切除例において、CTC陽性例の再発形式は、再発した12例中9例が腹膜播種だった。さらに、切除不能例における非切除因子別にCTC陽性率を解析した結果、腹膜播種ではCTC陽性例が62.7%を占めていた。

 そこで、原口氏らは、進行胃癌における腹腔洗浄水の細胞診、RT-PCR診断、末梢血中CTCの評価を行い、CTCによる腹膜播種の予測に関して検討を行った。

 対象は、腹腔洗浄水を採取した胃癌35例で、うち胃切除術施行例は22例、審査腹腔鏡は13例。T1、T2、T3、T4がそれぞれ4、3、8、20例、N0は14例、N1-3は21例、M0は27例、M1が8例。組織型は分化型12例、未分化型23例だった。35例中、腹膜播種例は7例、腹腔洗浄細胞診陽性例は35例中7例だった。

 左横隔膜下とダグラス窩の腹腔洗浄水100mLを対象に細胞診とRT-PCRを行った。RT-PCRはCEAとCK-19を対象に解析した。また、血中CTCの解析は、血液7.5mLを採取し、抗サイトケラチン抗体、抗CD抗体、DAPI(核)によって蛍光染色し、CellSearchシステムを用いて行った。

 対照群として、胆石症、仮性膵嚢胞などの良性疾患8例の腹腔洗浄水を解析した。

 腹腔洗浄水のRT-PCRの結果、腹膜播種例では全例がCEAあるいはCK19が陽性で、一方、腹膜播種陰性例ではCEAあるいはCK19陽性例が21.4%だった。

 また、腹腔洗浄細胞診が陽性だった7例中、全例でRT-PCRによるCEAあるいはCK19が陽性で、一方、腹腔洗浄細胞診陰性例ではCEAあるいはCK19が陽性の例が21.4%だった。

 血中CTCと腹膜播種について解析した結果、腹膜播種陽性または腹腔洗浄細胞診陽性だった8例では、全例が腹腔洗浄水RT-PCR陽性で、血中CTCも全例で陽性だった。一方、腹膜播種陰性かつ腹腔洗浄細胞診陰性であった27例中、腹腔洗浄水RT-PCR陽性例は5例、血中CTC陽性例は3例だった。

 腹膜播種および腹腔洗浄細胞診で陽性と判断された症例は全例でCTC陽性だった。逆に、CTC陽性だった11例について解析した結果、癌の遺残および再発がなかったのは1例のみだった。

 これらの結果から原口氏らは、腹腔洗浄水を対象としたRT-PCRは腹腔洗浄細胞診と比較して遜色のない結果であったが、それ以上に血中CTCの評価は腹膜播種の予測因子として有用性が高く、非侵襲的な腹膜播種診断法として有効である可能性があると締めくくった。