内視鏡手術支援ロボットda Vinci Surgical System(以下、ダヴィンチ)を使用した肝切除術の検討から、ダヴィンチでは鉗子の自由度の高さなどの利点により、出血時の対応や肝門部でのグリソン一括処理などが可能で、腹腔鏡下肝切除術の限界を克服し、低侵襲性と安全性をさらに向上させる可能性があることが示された。藤田保健衛生大学では肝・脾臓外科と上部消化管外科が共同でこの手術を導入しており、同大肝・脾臓外科の棚橋義直氏が4月12日から14日まで千葉市で開催された第112回日本外科学会定期学術集会で発表した。

 ダヴィンチの利点には、多関節を有する鉗子、高画質の3次元画像、術者の手の震えを制御するフィルタリング機能、手の動きを縮尺して伝えるスケーリング機能などがある。

 同大では、2009年12月から現在までに22人の患者にダヴィンチを使用した肝切除術を行っている。今回は2011年6月までに同手術を行った15人について報告された。

 15人の内訳は、大腸癌肝転移6人、肝細胞癌(HCC)8人、肝原発EBウィルス関連リンパ増殖性肉芽腫症1人だった。腫瘍占拠部位は、S1が1個、S2が1個、S3が2個、S2/3が1個、S5が3個、S6が3個、S7が4個、S8が3個で、腫瘍径は0.8〜13.0cm(平均2.8cm)だった。
 
 11人に肝部分切除、2人に肝外側区域切除、2人に肝後区域切除が行われた。さらに、1人に回盲部切除、1人にHassab手術、2人にマイクロ波凝固療法(MCT)が併せて施行された。
 
 手術の平均出血量は871g、平均手術時間は併施術式を含めて8時間36分だった。全例で合併症は発生せず、術後在院日数は8〜26日だった。術後3〜18カ月が経過した現時点で、全例が生存中である。
 
 棚橋氏は、15人の中から2人の手術のビデオを供覧した。

 1人はHCCの女性患者で、S7の部分切除が行われた。副腎の剥離時や肝実質の切離断端に静脈性の出血がみられたが、鉗子の自由度が高いダビンチを使用することで、従来の腹腔鏡下手術と比較して、後方や固定された切離面での止血操作を容易に行うことができたという。
 
 もう1人は肝原発EBウィルス関連リンパ増殖性肉芽腫症の女性患者で、外側区域切除が行われた。外側区域グリソン2、3を一括で確保した後、2、3グリソンを個別にテーピングし切断した。
 
 今年4月から日本で保険収載されたロボット手術は前立腺癌に対する全摘出術のみであり、消化器外科の領域では今後もダヴィンチを使用するメリットを示していく必要があると考えられる。
 
 棚橋氏は、「従来の腹腔鏡下手術と比較して、ロボット肝切除術は肝実質の出血などの不測の事態に開腹術と同等の処置ができる。また肝門部のグリソン一括処理も行いやすい」と話した。同大では現在も症例の集積が続けられている。