80歳以上の高齢者に対する大腸癌の手術成績の検討から、手術時間に配慮することが術後合併症と術後在院死亡の予防に有用であることが示唆された。この検討は慶應義塾大学外科の落合大樹氏、長谷川博俊氏、北川雄光氏らによるもので、4月12日から14日まで千葉市で開催されている第112回日本外科学会定期学術集会で発表された。

 落合氏らは、高齢者の手術治療成績向上のための対策を明らかにするため、80歳以上の患者の大腸癌手術における術後合併症と死亡の発生率を推計学的に検討した。

 対象は、1990年4月から2011年3月までに同院で大腸癌手術を全身麻酔下で施行した80歳以上の患者223人(うち男性126人)で、年齢中央値は84歳(範囲:80〜96歳)だった。腫瘍の占拠部位は右側結腸が104人で最も多く、StageII以上の患者は167人だった。BMIの平均は21.54、米国麻酔科学会(ASA)スコアが2以下の患者は164人だった。

 術後合併症は83人(37.2%)に発生し、このうち重篤な合併症が発生したのは21人(9.4%)だった。重篤な合併症では縫合不全が10人(4.5%)で最も多く、膿瘍・手術を要する腸閉塞・循環器疾患は各2人(0.9%)だった。3人(1.3%)は術後在院死亡した。

 合併症が発生した83人と発生しなかった140人では、年齢、性別、BMI、病変部位、術式に差はみられなかった。一方、ASAスコアが2以下の患者は、合併症が発生した患者では83人中55人、発生しなかった患者では140人中109人で、有意差がみられた(p=0.003)。また平均手術時間にも有意差がみられ、それぞれ202分と174分だった(p=0.027)。

 単変量解析で独立した危険因子として抽出されたのは、全合併症では手術時間、重篤な合併症では占拠部位、ASAスコア、手術時間だった。また術後在院死亡ではBMIと手術時間が抽出された。

 さらに多変量解析では、全合併症では性別(女性)と手術時間が独立した危険因子となった(それぞれp=0.0487、p=0.0022)。重篤な合併症では手術時間が、術後在院死亡ではBMIが、それぞれ危険因子として抽出された(それぞれp=0.0293、p=0.0468)。