肝細胞癌治癒切除後において、脈管侵襲陽性、最大腫瘍径50mm以上とともに、非癌部のプロスタグランジンE合成酵素(mPGES-1)高発現が1年未満再発の危険因子であることが明らかになった。4月12日から千葉県幕張市で開催されている第112回日本外科学会定期学術集会で、国立病院機構長崎医療センターの藤岡ひかる氏が発表した。

 肝細胞癌治癒切除後、1年未満での再発例は、1年以上無再発あるいは1年以上経過した後の再発例に比べて非常に予後が悪いことが明らかになっている。藤岡氏らは、早期再発リスクが高い症例に対し早期からの追加治療を可能にするため、1年未満再発の危険因子の探索を進めている。

 藤岡氏らが注目している因子の1つがプロスタグランジンE2(PGE2)で、PGE2は大腸癌などで細胞増殖亢進、抗アポトーシス作用、血管新生の亢進が示されているが、肝臓においてはPGE2を測定することが難しかった。最近、PGE2の生合成に関わるプロスタグランジンE合成酵素の1つMicrosomal PGES-1(mPGES-1)を免疫組織染色によって検出し、その染色強度をスコア化して評価した結果、mPGES-1高発現群は低発現群に比べて治癒切除後無再発生存率が有意に低いことを見いだしている。

 今回、肝細胞癌症例における非癌部のmPGES-1の発現を含め、1年未満再発の危険因子を探索した。

 対象は、2003年4月以降に同院で治癒切除し、非癌部のmPGES-1発現を検討した62例。1年未満で再発した群(A群、20例)と1年以上無再発または1年以上で再発した群(B群、42例)に分け、臨床病理学的因子と再発との関連を検討した。

 62例のうち、男性は43例、B型肝炎関連が20例、C型肝炎関連が29例、肝硬変例が29例、Child-PughAは56例、観察期間中央値は69.5カ月だった。

 宿主因子について解析した結果、プロトロンビン時間(%)はB群に比べてA群で有意に低く、mPGES-1高発現例はA群が20例中16例、B群は42例中13例で、有意にA群で多かった。

 腫瘍因子では、最大腫瘍径はB群に対しA群が有意に大きく、脈管侵襲陽性例はB群に比べてA群で有意に多かった。AFPに有意差はなく、PIVKAはB群に比べてA群で有意に高かった。

 1年未満再発危険因子について多変量解析を行った結果、脈管侵襲、mPGES-1、腫瘍径50mm以上が有意な因子として見いだされた。

 この3つの因子について、それぞれを1点としてスコア化したところ、62例中、スコア0点は23例、スコア1点は25例、スコア2〜3点は14例だった。

 そしてスコア別に無再発生存率と全生存率を解析した結果、1年無再発生存率は、0点で94.1%、1点で74.9%、2〜3点で7.4%と、2〜3点は0、1点に比べて予後がきわめて悪かった。全生存率についても、0点に比べて、1点、2〜3点とスコアが上がるに従って有意に低下した。

 こうした結果から、多変量解析で有意だった脈管侵襲、mPGES-1高発現、最大腫瘍径50mm以上の3因子のうち、2因子以上を持つ症例は予後不良と判定できる可能性があり、術後早期からの追加治療の判断に資することができると締めくくった。