腫瘍溶解性ウイルスHF10の米国における治験が、頭頸部癌を対象に近く開始される。HF10の国内における臨床試験を進める名古屋大学准教授の粕谷英樹氏が明らかにしたものだ。HF10は自然変異型のヘルペスウイルスで、マウスを用いた実験により、野生型のヘルペスウイルスに比べて毒性が1万倍低く、癌細胞株でより高い増殖活性を持つことが明らかになっている。4月2日から4日に福岡市で開催された日本外科学会でHF10の開発の現状を報告した。

 HF10については、頭頸部癌患者3人、進行乳癌患者6人、切除不能膵癌患者6人への接種が終了しており、現在、切除不能膵癌超音波内視鏡(EUS)下で追加接種する臨床試験が進められている。EUS下で追加接種する試験には3人が登録される予定だ。

 頭頸部癌患者には、1×10の4乗個(1人)、または1×10の5乗個(2人)のウイルスを3日間で3回投与し、投与の2週間後に切除した。その結果、安全性が確認された。進行乳癌患者には、1×10の4乗個のウイルスを1回(1人)、1×10の5乗個のウイルスを1回(1人)、1×10の5乗個のウイルスを3回(1人)、5×10の5乗個のウイルスを1回(1人)、5×10の5乗個のウイルスを3回(2人)投与された。その結果、病理学的所見で、ウイルス感染による30%から100%の癌細胞変性が確認された。

 切除不能膵癌患者には、1×10の5乗個のウイルスを3回(3人)、5×10の5乗個のウイルスを3回(1人)、1×10の6乗個のウイルスを3回(3人)投与された。その結果、CA19-9の異常値を示していた5人中3人で数値の低下が確認され、最高値では7000から3000に低下していた。また、PETによる判定で部分奏効(PR)を1例に認めることができた。

 どの患者でも毒性は見られなかった。