第109回日本外科学会定期学術集会が4月2日から4日までの3日間、福岡市で開催される。癌治療の最前線に立つ外科医が集い、癌治療も含めた外科領域の最新動向が報告される。集会の会頭を務める田中雅夫氏に話を聞いた。


──今回の外科学会の大きな特色はどういったところでしょうか。

田中 今、この国の外科は大変なことになりつつあります。そこでテーマは、「Redemption of Surgery」にしました。社会が求めているはずの外科なのに、なぜ外科医が減っていくのかということを、社会に問いかけたいというのがこのテーマを選んだ理由です。Redemptionは復活、再生、回復、救い、癒しなどの広い意味があります。外科を復活させる、また外科による人々の救いや癒しの意味も込められています。この外科の復活を目指す五つの特別企画が今学会の大きな目玉です。

 現在、20代の外科医の人数は、5年前と比べて3分の2になってしまいました。つまり、彼らが中堅どころになって手術を本格的にする30代、40代になったときには、手術をする外科医は3割減ってしまう。患者さんたちが長く待たされる時代が来るはずなのです。

──特別企画の内容はどういったものですか。

田中 1つ目は外科医療が危機に瀕しているのはどうしてか、そしてどうすればよいかを議論するものです。行政からも、勤務医も開業医も研修医も、それぞれの立場から語り、提言してもらいます。2つ目は「忙しすぎる外科医」。労働環境を改善するにはどうするかを話し合います。3つ目は「医療事故への対応」。外科医はハイリスクな仕事ですから医療事故への対応が大切になります。医療安全調査委員会という制度が始まりましたが、この制度がどうなるかを討議します。4番目が、「医療紛争」。医療紛争を起こさないために行うべきこと、さらに起こった場合の取り組みを議論します。最後に、「技術の評価のあり方」です。給与面も含めて現在の技術評価のあり方が正しいのか考える企画になります。

──その他にどういった特色がありますか。

田中 もう1つの目玉はInternational Video Teleconferenceです。九州大学は学術用超高速インターネットを使って、アジア、米国、欧州、オーストラリア、ニュージーランドまで広く強固なネットワークを形成しています。このネットワークを使って、時差の少ないところが一緒になり、ビデオを使ってTeleconferenceを行います。国によって手技が違っている場合もありますので、有用な情報が得られると期待しています。例えば肥満に対する外科です。日本では、まださほど普及はしていませんが、オーストラリアでは多数の手術が行われ、肥満の人を救っています。そういった国内では経験しにくい技術を会員の人たちに見てもらいたいと思っています。

──癌関連はどんな企画がありますか。

田中 全体を通して多くの癌関連の演題があります。Teleconferenceもほとんどが癌で、大腸癌、胃癌、膵癌が取り上げられます。そして、国際シンポジウムを2件行いますが、その1つは膵臓癌です。シンポジウムやパネルディスカッションも癌関連の発表が目白押しです。

 癌関連で例年と異なるのは、緩和医療を取り上げることです。外科学会としては初めての試みです。

──なぜ緩和医療を取り上げたのですか。

田中 現実には癌患者の末期を看取っている人たちは外科医が圧倒的に多いのです。ところが、外科医は緩和医療という言葉を敬遠しがちです。そこで、緩和医療の内容を、外科学会の会員に知ってもらおうと計画しました。緩和医療に関わる様々な専門家が解説をしてくれます。どのくらい会員が聴きに来てくれるかはわかりませんが楽しみにしています。

──日本の腫瘍外科医に今後求められることは何でしょうか。

田中 日本の腫瘍外科医は欧米の腫瘍外科医と大きく違います。日本の腫瘍外科医は、単に切って治すだけではないのです。診断から担当しているのが日本の外科医です。欧米の外科医はほとんど診断をせず、回されてきた患者の腫瘍を次々に切除して、戻すというスタイルで行っています。日本の外科医が、診断を行うことを下火にしてはいけないと思っています。内視鏡で分かるように、診断と外科的処置は密接に関係しているからです。外科の医療体制はだんだん欧米式になりつつありますが、診断のできない外科医ばかりになってしまうと、日本の良さが失われてしまうと思います。