新規抗癌剤の第1相臨床試験に参加する患者は、治験薬の治療効果に強い期待感を抱いているだけに、副作用などで中断せざるを得ない時の戸惑いは大きく、精神的なサポートが重要であることが、試験参加者を対象にした調査で明らかになった。埼玉県立がんセンター精神腫瘍科の和田信氏らが、6月18日、19日と東京都で開催された第15回日本緩和医療学会学術大会で報告した。

 標準的治療薬で効果が見られない場合、緩和ケアを受けるか、臨床試験に参加するかを選択することは患者にとって大きな問題である。和田氏らは、2009年5月から2010年3月までに、埼玉医科大学国際医療センター腫瘍内科で、新規抗癌剤の第1相臨床試験に参加した患者と説明を受けたが断った患者を対象に患者心理を調査した。

 試験は胃癌や直腸癌、膵癌、卵巣癌などの固形癌に対する6件の第1相臨床試験で、質問票と面接による調査を試験開始時、試験を断った時、試験終了時あるいは中断時に行った。

 16人が臨床試験を開始し、2人が説明を受けたが参加を断った。また試験期間中に5人が中断となった。

 試験に参加した16人に臨床試験に参加する動機を質問票で尋ねたところ、6人が「治験薬の治療効果」を主な理由に挙げ、面接でもほぼ全員が治験薬の治療効果に強い期待を示していた。そのほか、「医師や病院に対する信頼」「何らかの治療を行っていることによる希望や心の支え」「他人のためになるかもしれないこと」なども理由として挙げられた。

 その一方で、治療効果が必ずしも期待どおりにならない可能性や副作用の可能性については、「一般的には理解しているが、自分にとっては楽観的に考えている傾向があった」と和田氏は述べた。また治療効果が得られなかった場合についても、具体的に考えることを避ける傾向があった。

 試験の参加を断った2人では、「副作用が心配」「入院したくないから」「効果がはっきりしていない」などを断った理由として挙げた。

 また癌の進行や薬の副作用で試験が中断となった患者では、「効果に期待していたため、当惑して、将来の展望が難しくなることがあった」と和田氏。しかし、試験を受けたことに対する後悔は認められなかったという。

 和田氏は、「中断時の対応が最も大切であり、精神的にサポートするとともに、タイミングを見て、緩和ケアを提示することが重要。それには緩和ケアを選ぼうと思えば選ぶことのできる状況にすべきだろう」と話した。