在宅終末期癌患者の家族は、患者の苦痛や病状、さらに介護の負担に強い困難感を抱いていることが、遺族を対象にした調査で明らかになった。大田原赤十字病院地域医療福祉連携課の石井容子氏らが、6月18日から19日に東京で開催された第15回日本緩和医療学会学術大会で報告した。同氏は、「患者の苦痛への対応や病状の進行について、医療者が家族介護者に十分説明することが重要」と述べた。

 石井氏によれば、一般市民の約50%が終末期の在宅療養や在宅での看取りを希望しているが、実際には癌患者の在宅での死亡割合は癌死全体の7.3%であるという。

 そこで、終末期癌患者と家族が安心して在宅療養に臨むため、家族介護者の困難感を明らかにすることを目的とした調査が行われた。対象は、在宅終末期癌患者の遺族で、在宅療養期間が5日以上、患者の死後6カ月から2年半、患者および遺族が20歳以上で、患者の病名を周知していることを適格基準とした。

 2009年7月から10月に調査が行われた。分析対象者は280人、遺族は女性が79.3%を占め、60歳以上が60.7%、患者の配偶者が56.4%、患者の子供が28.6%だった。一方、患者は男性が57.9%、平均年齢が72.8歳、在宅療養期間中央値は38日(5〜3678日)、自宅での看取りが68.9%だった。

 「介護の負担」「往診医に関すること」「介護と仕事・趣味とのバランス」「患者の苦痛や病状」「訪問看護師に関すること」「在宅サービスの利用」「家族介護者の親族との関係」「葬儀に関すること」の8因子について、質問紙で尋ねた。

 調査の結果、「患者の苦痛や病状」に関する困難感が最も強く、「患者が日々弱っている姿を見るのがつらかった」と答えた遺族は90%、「患者が苦しむ姿を見るのがつらかった」が85%、「患者が症状で苦しんでいた時に、どうすることもできなかった」が67%だった。

 次に困難度が高かったのが「介護の負担」で、「目の前のことをこなすことに精一杯だった」が78%、「毎日が慌ただしかった」が77%、「患者のことが気がかりで、よく眠れていなかった」が75%、「患者中心の生活になり、介護以外のことを犠牲にすることが多かった」が69%だった。このため石井氏「医療・福祉関係者が家族介護者の介護負担を軽減するためのケアやサービスを提供する必要性がある」と指摘した。

 また、8因子を総合して困難感を評価した結果、家族介護者が在宅死を希望していない場合と家族介護者が男性の場合に、困難感が強いことが分かった。「男性介護者へはより配慮し、家族介護者の身体的、精神的サポートも必要である」と石井氏は述べた。