癌患者の20〜40%に精神科的な対応が必要と言われているが、疼痛管理のための医療用麻薬は1割、抗うつ薬や抗不安薬などの向精神薬の使用はおよそ3割であることが、入院時に患者が持ってくる持参薬の分析で明らかになった。国立がんセンター東病院薬剤部の鈴木真也氏らが、6月18日、19日と東京都で開催された第15回日本緩和医療学会学術大会で報告した。

 対象は、2009年10月1日から3月31日までの6カ月間に入院した患者で、入院時の持参薬が確認できた2886件。複数回入院している場合は、最初に確認した内容を集計した。実際の対象患者は2044人だった。

 2044人のうち、男性は1402人、年齢中央値は67歳(16〜93歳)、使用薬剤数の中央値は4剤(0〜23剤)で、常時使用している薬剤数は3剤(0〜17剤)だった。抗癌剤の副作用に対する支持療法薬が複数処方されていたが、「アドヒアランスを保つのは一般に3剤までと言われているが、持参薬はそれを上回っていた」と鈴木氏。

 持参薬に注目すると、疼痛管理のため、オキシコドン徐放錠やオキシコドン散、モルヒネ内服液などの医療用麻薬を使用している患者は10.3%(211人)だった。定期使用者(リン酸コデインを除く)は9.1%、レスキュー使用のみは4.4%であり、モルヒネ換算値の中央値は25mg(3.8〜265mg)だった。

 向精神薬は31%(634人)と、医療用麻薬よりも多かった。向精神薬のうち、ゾピクロンやブロチゾラムなどの睡眠導入薬が17.6%、エチゾラムやアルプラゾラムなどの抗不安薬が11%、プロクロルペラジンをはじめとする抗精神病薬が7.4%、ガパペンチンなどの抗てんかん薬が5.5%だった。またパロキセチンなどの抗うつ薬は2.7%で、「抗うつ薬が思ったよりも少なかった」(鈴木氏)という。

 癌患者でうつ状態が認められるのは約15%とされるが、「精神科による治療が行われた患者が15〜20%とすれば、この程度の値になるだろう」(鈴木氏)としている。さらに同氏の施設では初期患者が多いが、より進行した癌患者では抗うつ薬の使用が多くなる可能性も指摘した。

 抗精神病薬のプロクロルペラジンは吐き気止めとして使用されていたことから、鈴木氏は「錐体外路障害やアカシジアなどの副作用」、さらに「医療用麻薬や向精神薬を使用している患者はせん妄リスクが高いので、入院中は注意が必要である」と指摘した。


[訂正]6月24日に以下の訂正を行いました。
・「パロキセチンなどの抗てんかん薬が5.5%だった。またガパペンチンなどの抗うつ薬は2.7%で」を「ガバペンチンなどの抗てんかん薬が5.5%だった。またパロキセチンなどの抗うつ薬は2.7%で」に修正しました。
・「医療用麻薬や向精神薬によるせん妄についても入院中は注意が必要である」を「医療用麻薬や向精神薬を使用している患者はせん妄リスクが高いので、入院中は注意が必要である」に修正しました。