オピオイドが投与された患者に嘔気・嘔吐や便秘が出現した場合、原因の評価と原因に応じた対応が必要であり、嘔気・嘔吐には想定される機序から制吐薬を選択し、便秘には便の性状から下剤を選択する――。これらの推奨は、6月に新しく発行された「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」(以下、がん疼痛ガイドライン)によるもの。6月18日、19日と東京都で開催された第15回日本緩和医療学会学術大会で、がん疼痛ガイドライン作業部会の委員を務めた大阪大学大学院薬学研究科の岡本禎晃氏が解説した。

 日本緩和医療学会の緩和医療ガイドライン作成委員会はこのほど、がん疼痛ガイドラインを作成し、公表した。同委員会の委員長は筑波メディカルセンター病院緩和医療科の志真泰夫氏、担当委員は国立がん研究センター中央病院看護部の戸谷美紀氏、同緩和医療科・精神腫瘍科の的場元弘氏、聖隷三方原病院緩和支持治療科の森田達也氏が務めている。

 シンポジウム「がん疼痛治療を見直してみる――新しい「がん疼痛ガイドライン」をめぐって――」において、岡本氏はオピオイド鎮痛薬による副作用の嘔気・嘔吐と便秘について、ガイドラインの推奨を解説した。

 まず嘔気・嘔吐については、オピオイドが投与された患者に出現した場合、他の要因を鑑別し、治療を検討することになる。オピオイドの他に嘔気・嘔吐の原因となるものには、ジギタリス・抗菌薬・鉄剤・抗癌剤などの薬剤、胃潰瘍・消化管閉塞・便秘などの消化器疾患、電解質異常、感染症、高血糖、脳転移などの中枢神経の病変、放射線治療などがある。オピオイドによる嘔気・嘔吐と判断する前に原因を評価し、治療可能な場合は治療を検討する。

 オピオイドが嘔気・嘔吐の原因と考えられる患者には、想定される主な機序から制吐薬を選択し投与する。オピオイドの嘔気・嘔吐に関しては質の高い臨床研究がないため、同ガイドラインでは専門家の合意による第一選択および第二選択の制吐薬を推奨している。第一選択の制吐薬が無効であった場合、第一選択の制吐薬を2種類併用するか、第二選択の制吐薬に変更する。第一選択の制吐薬には、ドパミン受容体拮抗薬、消化管蠕動亢進薬、抗ヒスタミン薬が、第二選択の制吐薬には、非定型抗精神薬、フェノチアジン系抗精神病薬、セロトニン拮抗薬などがある。

 また、オピオイドの変更、すなわちオピオイドローテーションも嘔気・嘔吐を改善する可能性がある。モルヒネからオキシコドンまたはフェンタニルに、またはオキシコドンからフェンタニルに変更することが推奨される。

 さらに、オピオイドの投与経路の変更も嘔気・嘔吐を改善する可能性があることから、経口投与を持続静注・持続皮下注に変更することも推奨される。

 次に便秘については、オピオイドが投与された患者に出現した場合、他の要因を鑑別し、治療を検討するとされた。特に腸閉塞と宿便の有無の評価は不可欠とされている。

 便秘を悪化させる原因には、脱水、高カルシウム血症などの代謝異常、抗コリン薬や利尿薬、抗うつ薬などオピオイド以外の薬物も考えられる。可能であれば原因の治療を行い、十分な鎮痛が得られている場合はオピオイドの減量も考慮するとしている。

 下剤の選択は、便が固い場合は浸透圧下剤、腸蠕動が低下している場合は大腸刺激性下剤を使用し、効果が不十分な場合は併用する。現在、オピオイドによる便秘に対する下剤が開発中であり、今後状況が変化する可能性もある。

 便秘の原因がオピオイドと考えられる場合、オピオイドの変更が便秘を改善する可能性がある。モルヒネからフェンタニルへの変更は有効であり、オキシコドンからフェンタニルへの変更も有効と考えられる。

 臨床ではこれまで、オピオイド開始時に制吐剤や下剤の予防投与が行われる場合が多かった。本ガイドラインでは、オピオイド開始時に制吐薬や下剤を投与することが、投与しないことに比較して嘔気・嘔吐や便秘を減少させる根拠はないとしている。その上で、十分な観察を行い、嘔気に対し制吐薬をいつでも使用できる状況にしておくこと、嘔気・嘔吐が継続する場合は数日間定期的に投与すること、便秘については水分摂取と食事指導、下剤の投与など便秘を生じさせないような対応をすることを推奨している。