終末期患者において、輸液治療は嘔吐や手足のむくみなど患者の自覚症状に影響することが、前向き観察研究で示された。札幌南青州病院緩和治療科の中島信久氏が、6月18日、19日と東京都で開催された第15回日本緩和医療学会学術大会で報告した。同氏は、輸液量の減量を中心とした輸液管理が、患者の自覚症状の緩和やQOL向上につながる可能性があるとしている。

 終末期患者では水分や栄養の経口摂取が低下し、輸液治療が必要になることが多い。しかし多量の輸液によって、浮腫や腹水、気道分泌が多くなることを、中島氏は昨年の同学会で報告した。本学会では輸液量による患者の自覚症状やQOLへの影響を調べた結果を報告した。

 対象は2003年4月から2007年3月に、3週間以上の入院治療の後に死亡した終末期の消化器癌患者75人。死亡の3週前および1週前のいずれの時点も1000mL/日以上の輸液を投与した群(H群:32人)と、どちらか一方の時点は1000mL/日未満だった群(NH群:43人)に分けた。

 H群の平均年齢は64歳、NH群は66歳で、男性がそれぞれ19人、24人。原発巣はH群では胃が15人、NH群は17人、結腸・直腸はそれぞれ12人、21人、胆道・膵臓が5人、6人だった。また肺転移がそれぞれ4人、11人、肝転移が11人、15人、腹膜転移は19人、20人だった。全身状態(ECOG PS)はPS 2以下がそれぞれ9人、12人、PS 3が10人、13人、PS 4が13人、16人だった。

 評価は、癌症状の評価尺度であるMDASI(M.D.Anderson Symptom Inventory) を使い、死亡7〜10日前の主観的症状(痛み、満腹感・お腹の張り、嘔気・嘔吐、息苦しさ・呼吸困難感、手足のむくみとそれに伴う苦痛、全身倦怠感、口の渇き、全体的な調子)と輸液量との関係を調べた。

 その結果、満腹感・お腹の張り、嘔気・嘔吐、手足のむくみとそれに伴う苦痛、全体的な調子は、輸液量の多いH群で有意に増悪した(p<0.05)。また輸液に対する患者や家族の考え方(肯定的、否定的)による影響をみたところ、輸液に対して否定的な場合、輸液量が少ないNH群では、全体的な調子は良くなることが示された。

 浮腫や腹水などの理学的所見は輸液量が多いほど発生しやすく、浮腫と判断された患者では、手足のむくみとそれに伴う苦痛が、腹水のある患者では満腹感・お腹の張りといった自覚症状が強いことも確認された。

 こうした結果から中島氏は「輸液の減量が理学的な所見の改善、ひいては主観的な症状の軽減につながる可能性がある」と述べた。