婦人科悪性腫瘍に対する化学療法に伴う末梢神経障害について、プロスペクティブな検討が行われ、障害の頻度を示すにはCTCAEが、障害の強度とその推移を示すにはVisual Analogue Scale(VAS)が優れ、これらを併用することでより詳細に神経障害を把握できる可能性が示された。5月10日から12日まで札幌市で開催された日本産科婦人科学会第65回学術講演会で、久留米大学医学部産科婦人科学教室の竹本周二氏が発表した。

 化学療法に伴う末梢神経障害は、治療中・治療後の患者のQOLをしばしば低下させるが、主観的な有害事象であることから、客観的に評価することは容易ではない。

 これまでに竹本氏らは、特にレジメン間、すなわちTC療法(パクリタキセル、カルボプラチン)とDC療法(ドセタキセル、カルボプラチン)の末梢神経障害の強度の比較において、VASを利用することの有用性を報告してきた。しかし、有害事象の評価法として最も多く利用されるNCIのCTCAEとの比較は行っていない。

 そこで竹本氏らは、化学療法に伴う末梢神経障害の評価法として、VASとCTCAEの有用性を比較検討した。

 対象は、2008年から2012年の間に、同大でTC療法を行った患者93人(年齢中央値57歳)で、261サイクルが解析可能だった。サイクル数は1-3サイクルが167人と最も多く、癌腫では卵巣癌が44人で最も多く、子宮頸部癌の19人、子宮内膜癌の16人が続いた。糖尿病合併例が5人含まれた。前治療の化学療法は12人が受けており、全例1レジメンで、パクリタキセルは3人に投与されていた。

 TC療法では、パクリタキセル175-180mg/m2およびカルボプラチンAUC5-6を3週おきに投与した。CTCAEは、ver.3.0の運動性障害と感覚性障害を用いて、医療者(主に看護師)がサイクル毎のグレードを記録した。VASは、すべての患者から文書による同意を得たうえで、治療開始から10日間の痛みとしびれの程度(VASスコア)を記入するよう依頼した。

 各コース終了後にアンケート用紙を回収し、CTCAEグレードとVASスコアそれぞれの結果を、次の2群間を対比することで比較検討した。2群間の比較は、3サイクル目以内と4サイクル以降、60歳以上と60歳未満、糖尿病ありとなしで行った。

 解析可能だった261サイクルでみると、CTCAEでは運動性障害はグレード1-3が81.1%で、このうちグレード3は15.3%、感覚性障害はグレード1-3が76.6%で、このうちグレード3は8.4%だった。

 痛みに関するVASスコアは4日目にピークを示し、その後急速に低下していた。一方、しびれに関するVASスコアは緩徐に上昇し、10日目も改善がみられなかった

 3サイクル目以内と4サイクル以降の比較では、CTCAEではグレード3以上の痛みは3サイクル目以内で有意に多く(p=0.02)、いずれかのグレードのしびれは4サイクル以降に有意に多かった(p<0.001)。竹本氏は「蓄積毒性を反映するものと考える」と説明した。ただし、グレード3以上の痛みでは有意差はなかった。

 一方、VASスコアでは、痛みについては3サイクル目以内と4サイクル以降に有意差はみられなかったが、しびれについてはすべてのスコアが4サイクル以降で有意に高かった(いずれもp<0.01)。

 60歳以上と60歳未満の比較では、CTCAEではいずれかのグレードの痛みは60歳未満で有意に強く、しびれは60歳以上で有意に多かった(いずれもp=0.02)。一方、VASスコアでは、痛みに差はなかったが、しびれは60歳以上で9日目と10日目に有意に強かった(p<0.05)。

 糖尿病の有無による比較では、CTCAEでは有意差はみられなかった。一方、VASスコアでは、糖尿病ありの場合に疼痛は1-3日目と5-8日目、しびれは2、9、10日目で有意に高かった(いずれもp<0.05)。

 竹本氏は「CTCAEで評価できないものがVASでは有意差をもって評価できることが示された。VASは障害の強度とその推移を示すことができ、CTCAEは障害の発生する頻度、重症化する頻度を具体的に示すことができていた」と話した。同科ではCTCAEとVASを併用している。

 患者報告アウトカム(patient-reported outcome:PROs)は、医療者の記録より正当で、過小評価されにくいと報告されている。竹本氏は「VASは他のPROsよりも記入が簡単で、臨床に用いやすいと思われる」と述べた。