切除不能な進行膵癌患者に対し、ゲムシタビンとエイコサペンタエン酸(EPA)含有栄養剤の併用は、ゲムシタビン単剤療法と比べて1年生存率を改善する可能性がランダム化フェーズ2試験から示された。8月29日から31日まで仙台市で開催された第11回日本臨床腫瘍学会学術集会で、神奈川県立がんセンター消化器内科肝胆膵の上野誠氏が発表した。

 進行膵癌の治療では、栄養低下、悪液質がキーワードの1つとなる。悪液質は、TNF-α、IL-1、IL-6、proteolysis-inducing factor(PIF)などのサイトカインによって誘発され、臨床上の指標はCRPや好中球/リンパ球比と考えられている。N-3系脂肪酸のEPAは、炎症性サイトカインを抑制し、悪液質の改善に寄与することが示唆されている。

 上野氏らは、進行膵癌患者を対象として、ゲムシタビンとEPA含有栄養剤の併用の有効性と安全性を評価するフェーズ2試験を実施した。

 患者を次の2群に2対1でランダムに割り付けた。
・併用群:4週を1サイクルとして、ゲムシタビン1000mg/m2を1、8、15日目に投与し、EPA含有栄養剤(商品名:プロシュア、1パック240mLあたりEPA 1056mgを配合)を1日に1-2パック摂取する。
・単独群:ゲムシタビン単剤療法を行う。

 主要評価項目は1年生存率だった。

 2010年5月から2011年10月までに66人が登録され、併用群43人(年齢中央値68.0歳、男性51.2%)、単独群23人(同69.0歳、73.9%)となった。適格基準に含めたPS 2の患者は、併用群4.7%、単独群4.3%と少数で、III期はそれぞれ20.9%と21.7%、IV期は79.1%と78.3%、再発症例は7.0%と4.3%だった。

 主要評価項目である1年生存率は、併用群35%、単独群19%となり、EPA含有栄養剤の併用により改善が示された。生存曲線は当初は両群で同様だったが、10カ月後の頃から併用群が上回る遅発性効果が示された。全生存期間(OS)中央値は、併用群8.2カ月、単独群9.7カ月で有意差はなかった(p=0.403)。

 奏効率は、併用群4.7%、単独群8.7%、病勢コントロール率(DCR)はそれぞれ67.4%と65.2%で、有意差はなかった(それぞれp=0.606、p=1.000)。

 無増悪生存期間(PFS)中央値も両群で差はなく、併用群4.3カ月、単独群4.2カ月だった(p=0.455)。

 有害事象は両群で有意差はなかった。グレード3/4の毒性として、好中球減少は併用群30.2%、単独群21.7%に発現した。下痢の発現は、グレード1、2の事象は併用群30.2%、単独群17.4%と併用群で多かったが、グレード3以上の下痢はそれぞれ0.0%と4.3%だった。

 サブグループ解析では、男性、膵体尾部癌の患者でOSが良好となり、生存曲線には遅発性効果が認められた。EPA含有栄養剤の摂取量は、男性が女性よりも多く、また膵体尾部癌の患者が膵頭癌の患者よりも多かった(いずれもp=0.01)。

 悪液質の臨床上の指標となるCRPの変化は、単独群と比べて併用群で抑えられていた。さらに、CRP高値の患者よりもCRP低値の患者で併用群の予後が良好だった。

 上野氏はこれらの結果から、「EPA含有栄養剤を併用することにより、抗腫瘍効果はないが、悪液質が抑制されたと考えられる。CRP高値で悪液質が強い患者に対する効果は低いが、CRP低値で今後悪液質となる患者で効果が得られるのではないか」と話した。

 本試験では、セカンドライン治療は併用群の80%、単剤群の74%に行われたが、実際には予定された治療がほとんど行えない患者も少なくない。上野氏は「ファーストライン治療終了後に栄養状態が維持できた併用群では、セカンドライン治療が十分に行われ、それが生存の遅延性効果につながったのではないか」と考察した。