EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)患者は、ファーストライン治療としてEGFR-TKIとプラチナダブレットのどちらを選ぶのか。短い事例文に対する回答を得るビネット調査を用いた研究(LOGIK0903)では、患者の73%がEGFR-TKIを、27%がプラチナダブレットを選択した。患者の選択は、高い効果への期待、全身状態が良好で仕事や家事が継続できるという希望に基づいていた。8月29日から31日まで仙台市で開催された第11回日本臨床腫瘍学会学術集会で、日本赤十字社長崎原爆病院呼吸器科の福田実氏が発表した。

 癌の治療法の選択において、患者がどのような意向で治療を選択しているのか、日本では明らかになっていない。

 福田氏らは今回の研究において、患者が治療を選択する際の意思決定に影響する因子を明らかにし、臨床的背景、QOL、抑うつ・不安を調査し、患者の選択と医師および医療スタッフの選択を比較した。

 対象は、進行NSCLCと診断され、ファーストライン治療の前にEGFR遺伝子変異が解析された患者とした。医師と医療スタッフについては、肺癌患者のケアに関わっていることとした。プラチナ製剤やEGFR-TKIで既治療の患者は除外した。

 男性、女性、高齢者という臨床的背景の異なる対象をモデルとした治療法A(プラチナダブレット)とB(EGFR-TKI)について、二者択一のビネット調査を患者・医師・医療スタッフに行った。その治療法を好む理由を、「薬の位置付け」、「薬の使い方」、「薬の効果」、「薬の副作用」、「日常生活に対する影響」の5項目に分け、アンケートで調査した。さらに患者の臨床的背景、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を用いて抑うつ・不安、FACT-Lを用いてQOLを調査し、好む治療との関連性を検討した。

 2009年12月から2012年11月までに登録された対象中、適格と判断されたのは、患者100人、医師100人、医療スタッフ177人の計377だった。年齢(50パーセンタイル)はそれぞれ60-69、30-39、30-39、男性/女性はそれぞれ49/51、72/28、36/141だった。患者ではPS 0が33人、1が40人で多くを占めた。医師では呼吸器科の医師が69人で最も多く、医療スタッフでは看護師が129人で最も多かった。

 結果として、322人(85.4%)が治療法Bを選択した。治療法Bを選択したのは、患者73.0%、医師88.0%、医療スタッフ91.0%となり、患者で有意に少なかった(p<0.001)。医師では50歳以上、医療スタッフでは40歳以上の全例が治療法Bを選択していた。

 患者が治療法Bを選んだ理由として、「薬の効果」のオッズ比が最も高く3.88(95%信頼区間:0.95-15.95)となったが、有意ではなかった(p=0.06)。医師が治療法Bを選んだ理由は、「薬の使い方」(p<0.0001)、「薬の効果」(p<0.001)、「日常生活への影響」(p<0.0001)だった。医療スタッフが治療法Bを選んだ理由は、「薬の使い方」、「日常生活への影響」(p<0.0001)だった。

 「日常生活に対する影響」で希望するのは、患者は「日常生活や仕事の継続」(p<0.01)、医師は「趣味や遊びの継続」(p=0.02)、医療スタッフは「家族に与える影響や仕事の継続」(p<0.01)だった。

 QOLとの関係をみると、治療法Bでは治療法Aよりも、Trial Outcome Index Score(TOI)、Lung Cancer Subscale、Functional Well-Beingが有意に高かった(それぞれp=0.01、p=0.02、p=0.02)。また治療法Bでは、不安は少なく(p=0.08)、抑うつも有意に少なかった(p=0.03)

 福田氏は「希望する日常生活の内容には患者と医師で違いがある。医療チームとして患者をサポートする場合、その違いを考慮する必要がある」と話した。