切除不能肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法TACE)の日韓共同の前向き臨床試験の結果から、進行までの期間は7.8カ月、2年生存率は75%という成績が得られたことが明らかになった。この結果から、TACEは切除不能肝細胞癌に対する標準治療と見なしうるとした。7月26日から大阪市で開催された第10回日本臨床腫瘍学会で、国立がん研究センター東病院肝胆膵内科の池田公史氏が発表した。

 切除不能肝細胞癌に対する治療選択肢としてTACEの有効性を示す前向き臨床試験の結果は海外で報告されているが、日本および韓国では前向きに評価したエビデンスはない。

 2002年のスペインからの報告では、切除不能肝細胞癌を対象に、保存的治療を行う群とドキソルビシンを用いたTACEを行う群に割り付け、前向きに評価した結果、2年生存率が63%であることが示されている(Llovet et al, Lancet 2002)。

 この2年生存率63%がこれまでの報告で最も高く、今回、日本および韓国におけるTACEの成績がLlovetらの成績と同等以上かどうかを評価するため、池田氏らは単アーム試験を行った。目的は、切除不能肝細胞癌に対するエピルビシンまたはドキソルビシン/リピオドールを用いたTACEにおける有効性、安全性の評価。主要評価項目は2年生存率、副次評価項目は有害事象の発現頻度と奏効率とした。

 対象は切除不能肝細胞癌の初回治療例で、肝切除や肝移植、RFAの適応がなく、早期濃染を示す多血性病変、ECOG PSが0〜2で、Child-Pugh分類でAまたはBなどとした。

 プロトコール治療は、エピルビシン最大100mg/bodyまで、ドキソルビシン最大70mg/body、リピオドール最大20mLまで、塞栓物質は多孔性ゼラチン粒(制限はなし)を用いてTACEを行い、原則として癌の増大を認めた場合は同様の治療を繰り返すものとした。

 2008年1月から2009年1月までに、国内19施設、韓国8施設から患者を102例登録し、最終解析症例は99例だった。フォローアップ期間は2年間とした。

 99例の患者背景は、年齢70歳(中央値)、男性68%、PS 0が87%、1が12%、2が1%、背景肝がHCVだったのは53%、HBVだったのが19%、Child-Pugh分類でAだったのが81%、Bが19%、腹水が認められたのは5%だった。

 最大腫瘍径は39mm(中央値、範囲11-110)、腫瘍数が単発だったのが34%、多発だったのが66%、門脈腫瘍栓、肝静脈腫瘍栓陽性例はともに0例、AFP値は35.4 ng/mL(中央値)、PIVKA-II値は154 AU/mL(中央値)だった。

 CTC-AEによる有害事象評価の結果、グレード3/4の血液毒性として血小板減少が10%に見られた。グレード3/4の非血液毒性では、ビリルビン値上昇が2%、AST値上昇が34%、ALT値上昇が36%、ALP値上昇が1%だった。また、グレード3/4の腹部痛が4%だった。

 modified RECISTによる有効性評価の結果、奏効は完全奏効42%、部分奏効31%、病勢安定17%で、奏効率は73%だった。

 病勢進行までの期間中央値は7.8カ月、全生存期間中央値は3.1年、1年生存率89.6%、2年生存率75.0%だった。日本と韓国の間で生存率に有意な差はなかった。

 これらの結果から池田氏は、日本と韓国における切除不能肝細胞癌に対するTACEの治療成績は良好で、TACEは切除不能肝細胞癌に対する標準治療と見なしうると締めくくった。