HER2陽性の進行乳癌に対し、エリブリントラスツズマブの毎週投与の併用療法を検討したフェーズ1試験の予備的な結果から、用量制限毒性(DLT)は発現せず、忍容可能で、安全性プロファイルはエリブリンの単剤療法と同様であることが示された。7月26日から28日まで大阪市で開催された第10回日本臨床腫瘍学会学術集会で、昭和大学医学部内科学講座腫瘍内科学部門の佐々木康綱氏が発表した。

 エリブリンは、日本では2011年4月に手術不能または再発乳癌に対し承認された。今後、エリブリンとトラスツズマブの併用療法は臨床で使用が増加することが予測されるが、安全性は確立されていない。

 そのため今回のフェーズ1試験は、エリブリンとトラスツズマブの併用療法の安全性を確認し、ファーストライン治療としての可能性を検討するための治験として実施された。主要目的はDLTを評価し、忍容性と安全性を検討し、推奨量を推定すること、副次的な目的は同併用療法の薬物動態を調査し、抗腫瘍効果の予備的な評価を行うことだった。同試験には、埼玉医科大学国際医療センター/包括的がんセンターと独立行政法人国立がん研究センター東病院が参加している。

 対象は、進行または転移を有するHER2陽性乳癌(IHC3+またはFISH+)で、トラスツズマブとタキサン系抗癌剤による治療歴があり、左室駆出率(LVEF)が60%以上の患者とした。脳転移で、症状を伴い、積極的な治療を要する患者は除外した。

 毒性はCTCAE ver. 4.0により判定した。DLTの定義は通常のフェーズ1試験と同様で、1サイクル目に、7日を超えて持続するグレード4の好中球減少、グレード3以上の発熱性好中球減少、グレード3以上の非血液毒性などが発現し、試験治療との因果関係が除外できない場合にDLTとみなすこととした。

 治療は3週を1サイクルとした。エリブリンは1.4mg/m2を2分から5分かけて1日目と8日目に投与した。トラスツズマブは初回は4mg/kg、2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1、8、15日目に投与した。
 
 対象6人(年齢中央値64.5歳)中、ホルモン受容体が陽性の患者は2人、術前補助化学療法と術後補助化学療法を含む前治療のレジメン数では、3レジメンが2人、4・6・9・14レジメンが各1人だった。
 
 2012年2月をカットオフ日とすると、6人中1人は進行(PD)により投与中止となったが、5人は有用性が得られて投与を継続中で、このうち2人は5サイクルが投与されていた。
 
 DLTに該当する有害事象は認められなかった。多く観察された有害事象は好中球減少と白血球減少で、全グレードではいずれも83.3%、グレード3以上はそれぞれ66.7%と50.0%だったが、管理可能だった。グレード3以上の非血液毒性は発現しなかった。同試験の安全性プロファイルは、日本で行われたエリブリンの単剤療法のフェーズ2試験(E7389-J081-221試験)と同様だった。
 
 6人中1人に、投与後15日目にLVEFの軽度の低下(グレード2)を認めたが、22日目までに改善し、その後低下は認められなかった。
 
 薬物動態の解析では、同併用療法の1日目と8日目の血漿中エリブリン濃度およびエリブリンの薬物動態パラメータが、日本で行われたエリブリンの単剤療法のフェーズ1試験(E7389-J081-105試験)と比較され、薬物動態プロファイルは同様であることが示された。また血中トラスツズマブ濃度とトラスツズマブの薬物動態パラメータも確認された。これらの結果から、同併用療法において薬物間相互作用は発生しないと考えられた。
 
 エリブリンとトラスツズマブの併用療法については、長期の安全性や抗腫瘍効果などの評価が進められており、3週毎投与を検討するフェーズ1試験も進行中である。