肺癌に対し高度催吐性化学療法(HEC)を行った患者において、パロノセトロン、アプレピタント、デキサメタゾンによる3剤併用制吐療法は、急性期と遅発期の化学療法誘発性悪心・嘔吐(CINV)に高い嘔吐完全抑制率(CR)を示し、有効で安全と考えられることが、新潟肺癌治療研究会による前向きのフェーズ2試験から報告された。7月26日から28日まで大阪市で開催された第10回日本臨床腫瘍学会学術集会で、長岡赤十字病院呼吸器内科の林正周氏が発表した。

 肺癌でHECを行った患者のCINVに対するパロノセトロン、アプレピタント、デキサメタゾンによる3剤併用制吐療法の有効性と安全性は、日本では十分解明されていない。
 
 林氏らは、HECを行った肺癌患者を対象として、急性期(0-24時間)および遅発期(24-120時間)のCINVに対する3剤併用制吐療法の有効性と安全性を前向きに検討するフェーズ2試験を実施した。

 対象は初回化学療法としてHECが予定されている肺癌患者で、日常診療における肺癌治療症例。1日目のHEC開始前に、パロノセトロン0.75mgを静脈内投与、アプレピタント125mgを化学療法の1-1.5時間前に経口投与、デキサメタゾン9.9mgを静脈内投与した。2日目と3日目にアプレピタント80mgとデキサメタゾン8mgをそれぞれ投与し、4日目にデキサメタゾン8mgを投与した。
 
 有効性と安全性を評価する期間は、HECの投与開始から120時間後までとし、悪心の程度や嘔吐回数、食事摂取や体重の変化、便秘や下痢を患者がチェックするquestionnaire diaryと、医師の評価により判定した。同試験の主要評価項目は化学療法1サイクル目のCR、副次的評価項目は化学療法1サイクル目の嘔吐完全制御率(CC)、悪心抑制率、摂食障害抑制率、有害事象だった。
 
 2010年9月から2012年1月までに72人が登録され、このうち67人が安全性解析、63人が有効性解析の対象となった。67人(年齢中央値64歳、男性44人)の組織型は、非小細胞肺癌(NSCLC)が58人、小細胞肺癌(SCLC)が9人で、IV期が32人と半分以上を占め、IIIA期は1人、IIIB期は4人だった。22人が術後補助化学療法を受けていた。全例にシスプラチンが投与されており、用量は75mg/m2が35.8%、80mg/m2が55.2%だった。
 
 結果として、CRは急性期で96.8%、遅発期で81.0%、全期間でも81.0%(95%信頼区間:71.3-90.6)で、同試験の閾値CRとした60%を超え、主要評価項目は達成された。CCは急性期で92.1%、遅発期で63.5%、全期間でも63.5%だった。
 
 悪心抑制率は、急性期では84.1%だったが、遅発期では54.0%、全期間でも54.0%で、遅発期では約半数の患者が悪心を自覚していた。摂食障害抑制率は、急性期では92.1%だったが、遅発期では44.4%、全期間でも44.4%で、遅発期では半数以上の患者で食事摂取量に影響が出ていることが示唆された。
 
 CINVの危険因子の一つに「女性」が報告されていることから、林氏らは性別によるサブセット解析も行った。その結果、CRは急性期では男女間に差はなく、遅発期と全期間では女性で約10%低かったが、有意差はなかった。CCは急性期では男女間に差はなかったが、遅発期と全期間では女性で20%以上低く、有意差には至らなかったが、女性で症状が強く発現することが示唆された。
 
 悪心抑制率は、急性期では男女間に差がなかったが、遅発期と全期間では男性67.0%、女性28.6%となり、有意差を認めた(いずれもp=0.0042)。摂食障害抑制率は、急性期では男女間に差はなかったが、遅発期と全期間で男性52.4%、女性28.6%となり、有意差はなかったが、女性で食事に影響が大きく表れる傾向がみられた。

 全対象で観察された有害事象として、全グレードの便秘は68.2%、下痢は21.2%に発現したが、制吐療法に明らかに関連すると考えられるグレード3以上の事象は発現しなかった。
 
 林氏は「女性では遅発期の悪心抑制率が有意に低く、また遅発期のCCと摂食障害抑制率も低い傾向にあり、さらなる介入が必要と考えられる」と話した。