原発性乳癌患者へのアルブミン懸濁型のパクリタキセル(nab-パクリタキセル)による術前化学療法を検討した結果、忍容性が高く、特にHER2陽性乳癌患者で高い抗腫瘍効果が見られたことが報告された。広島市立広島市民病院乳腺外科の大谷彰一郎氏が、7月28日まで大阪市で開催された第10回日本臨床腫瘍学会学術集会で発表した。

 nab-パクリタキセルは転移・再発乳癌を対象に、従来型のパクリタキセルと比較検討した結果、奏効率や進行までの期間を有意に改善することが示されている。

 今回大谷氏らは、術前化学療法としてnab-パクリタキセルを投与し、安全性、忍容性、治療効果を検討した。

 対象は、2010年11月から2012年5月までに術前化学療法としてnab-パクリタキセルを投与し、根治手術後に病理結果が判明している患者30人。nab-パクリタキセル単独投与群(20人)とnab-パクリタキセル+トラスツズマブ併用群(10人)に分け、臨床病理学的因子を比較検討した。

 年齢中央値は単独投与群が51.9歳(31-71歳)、トラスツズマブ併用群が48.7歳(30-64歳)。閉経後患者の割合は、両群ともに60%。単独投与群のサブタイプ分類は、Luminal Aが20%、Luminal Bが65%、トリプルネガティブが15%、トラスツズマブ併用群はLuminal Bが30%、HER2タイプが70%を占めた。ステージIIA、IIB、IIIA、IIIB、IIICの割合は、単独投与群がそれぞれ40%、5%、20%、10%、25%で、トラスツズマブ併用群がそれぞれ37%、13%、13%、26%、13%だった。

 単独投与群(20人)の治療レジメンは、15人にはnab-パクリタキセルを4コース後にFEC療法(5-FU、エピルビシン、シクロホスファミド)を4コース実施。残り5人は、FEC療法4コースを先に行った後にnab-パクリタキセルを4コース投与した。トラスツズマブ併用群(10人)の治療レジメンは、8人にはnab-パクリタキセル 4コース+トラスツズマブ毎週投与を12コース実施後に、FEC療法を4コース実施。2人ではFEC療法実施後にnab-パクリタキセル4コース+トラスツズマブを3週おき投与とした。

 その結果、単独投与群の治療完遂率は、nab-パクリタキセル先行投与した15人中12人、FEC療法後に投与した5人中4人とそれぞれ80%だった。トラスツズマブ併用群では、nab-パクリタキセル+トラスツズマブを先に投与した8人中7人で88%、FEC療法後に投与した2人では100%だった。

 nab-パクリタキセルを先に投与した計23人においてはnab-パクリタキセルの減量や中止は見られなかった。

 奏効率は、単独投与群が90%(部分奏効[PR]18例、病勢安定[SD]1例)、トラスツズマブ併用群で100%(PR7例、完全奏効[CR]3例)。乳房温存率は単独投与群が70%、トラスツズマブ併用群で80%で、病理学的完全奏効(pCR)率はそれぞれ5%、60%だった。

 サブタイプ別に見たpCR率は、Luminal A、Luminal B(HER2陽性)、トリプルネガティブでは0%、Luminal B(HER2陰性)では7.7%だったのに対し、HER2陽性患者では85.7%と高率だった。

 nab-パクリタキセルに関連した主な副作用は、グレード4の好中球減少症が4.1%、グレード3の疲労感が25%、グレード3の末梢神経障害と関節痛がそれぞれ12.5%、グレード2の末梢神経障害が42%だった。FEC療法に関連した主な副作用は、グレード4の好中球減少症が29%、グレード3の好中球減少症と疲労感がそれぞれ25%、グレード2の吐き気が50%だった。

 末梢神経障害については、nab-パクリタキセルを先に投与し、その後FECを行った23人のうち、nab-パクリタキセル投与中の末梢神経障害がグレード3だった2人ではFEC中もグレード3だったが、グレード2だった5人ではFEC中に全例症状が消失していた。また、FECを先に投与し、その後nab-パクリタキセルを投与した7人では、nab-パクリタキセル投与中の末梢神経障害がグレード3だった2人では術後3カ月目で2人ともグレード2に改善、グレード2だった2人では術後3カ月目で2人とも症状が消失していた。これらの結果から大谷氏は、化学療法未治療例には末梢神経障害は大きな問題になりにくいとした。

 以上の結果から大谷氏は、nab-パクリタキセルを用いた術前化学療法は副作用も少なく忍容性が高かったとし、「特にHER2陽性乳癌に対し、高い抗腫瘍効果を示したことから、良好なレジメンである可能性が示唆された」と語った。