エストロゲン受容体(ER)陽性、HER2陰性の局所進行性または転移性の日本人閉経後乳癌患者に対するmTOR阻害剤のエベロリムスエキセメスタン併用投与は、エキセメスタン単独投与に比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、国際共同試験であるBOLERO-2のサブ解析結果から示された。がん研有明病院乳腺センター乳腺内科の伊藤良則氏が、7月26日から大阪市で開催された第10回日本臨床腫瘍学会で発表した。
 
 BOLERO-2試験は、レトロゾールやアナストロゾールに抵抗または不応となったER陽性、HER2陰性の局所進行性または転移性の閉経後乳癌患者を対象にした二重盲検無作為化フェーズ3試験。24カ国の189施設から日本人を含む724人の患者が登録された。

 既に全体の試験結果は報告されており、エキセメスタンへのエベロリムスの追加投与は、エキセメスタン単独投与と比べ、主要評価項目のPFSを有意に延長することが報告されている。
 
 今回、BOLERO-2試験から日本人データを抽出し、サブ解析を行った。解析対象となったのは日本人患者106人。エベロリムス併用群(エベロリムス10mg/日+エキセメスタン25mg/日を併用する群)が71人、プラセボ群(プラセボとエキセメスタン25mg/日を投与する群)が35人だった。追跡期間中央値は11.1カ月。

 患者背景は、年齢中央値が60歳、PS 0の患者が87-91%で、試験全体データの59-60%よりも多かった。前治療について、全体ではフルベストラント使用例が16%程度存在したが、日本人グループではほとんどいなかった。また、日本人グループにおいて、前治療として化学療法を行っていた例はエベロリムス併用群8%だったのに対し、プラセボ群は20%だった。

 追跡の結果、PFS中央値は、エベロリムス併用群が8.4カ月で、プラセボ群の4.1カ月と比べ、有意に延長した(ハザード比0.59、95%信頼区間:0.35-1.01、p=0.0253)。

 中央判定によるPFS中央値は、エベロリムス併用群が不達、プラセボ群が5.6カ月で有意差が確認された(ハザード比0.33、95%信頼区間:0.16-0.68、p=0.0009)。

 客観的奏効率(ORR)はエベロリムス併用群が16.9%、プラセボ群が0%。臨床有用率(CBR)はエベロリムス併用群が43.7%、プラセボ群が25.7%だった。

 日本人で最も多く確認された有害事象は口内炎(89%)で、発疹(55%)、味覚異常(31%)と続いた。試験全体のデータと傾向が異なっていた有害事象は非感染性肺炎の発生率だった。日本人患者における非感染性肺炎の発生率は31.0%で、試験全体の15.6%よりも高値だった。しかし、グレード3、4に限ると、日本人患者は4.2%、試験全体は3.7%となり、大きな差は見られなかった。

 安全性プロファイルは試験全体データと同様の傾向で、有害事象は治療の中断または投薬量の減少で管理可能だった。

 伊藤氏はこれらの結果から、「BOLERO-2試験の日本人データを解析した結果、世界全体のデータと同様の傾向が見られ、エベロリムス+エキセメスタン併用群では有意に無増悪生存期間が延長したほか、有害事象は管理可能だった」とまとめた。 

 当日は、日本人サブ解析結果のほかに、試験全体の18カ月のフォローアップデータも提示した。EORTC QLQ-C30によるQOLの評価が低下するまでの期間は、エベロリムス併用群(485人)が8.3カ月、プラセボ群(239人)が5.8カ月で、エベロリムス併用群において有意にQOL維持期間を延長した(p=0.0084)。

 さらに、治療開始6週間、12週間時点の骨代謝マーカー(BSAP、P1NP、CTX)のベースラインからの変化率は、プラセボ群でいずれの骨代謝マーカーについても6週間、12週間時点で増加したのに対し、エベロリムス+エキセメスタン併用群では減少する傾向を示した。一方、骨転移患者における病勢進行率はエベロリムス併用群で低い傾向にあったが、有意な差ではなかった。

 全てのデータを踏まえ、伊藤氏は、「エベロリムス+エキセメスタン併用群は、日本人の進行乳癌患者に対する有望な新しい治療選択肢である」と語った。