造血幹細胞移植患者への運動介入を検討した結果、移植前無菌室での有酸素運動実施率と移植後の6分間歩行との間に強い相関関係が見られたことから、治療早期からの運動療法が身体機能維持につながる可能性が示唆された。京都大学人間健康科学系運動機能開発学の立松典篤氏が、7月28日まで大阪市で開催された第10回日本臨床腫瘍学会学術集会で発表した。

 化学療法や放射線療法中のリハビリテーション介入は、手術前後に行われる周術期リハビリテーションに比べると、実施率が低いのが現状だ。外科手術に対しては、術後合併症や体力低下を防止するために行うのに対し、化学療法や放射線療法に対しては廃用症候群が進行しないように回復・維持することが目的になる。

 例えば、造血幹細胞移植では移植前に化学療法や放射線療法を行うが、好中球減少症が見られるため、患者は1カ月ほど無菌病室に入る。そのため、身体機能が低下し、廃用が進みやすい。

 そこで、立松氏らは、造血幹細胞移植期に運動療法による介入を行い、化学療法や放射線療法における運動介入の実施可能性と身体機能の変化について検討した。

 対象は、2010年6月から2011年12月に同種造血幹細胞移植を受けた患者32人。

 まず入院時に、運動介入のオリエンテーションと移植前の全身評価を実施。無菌室での管理期間(前処置開始から生着日まで)は、ベッドから離床するなどして毎日動くようにするほか、ウォーキングや自転車エルゴメーターなどで有酸素運動をし、筋力トレーニングは可能な範囲で行うよう指導した。一般病室での管理期間(生着後から退院日まで)は、リハビリ室でトレッドミル歩行や自転車エルゴメーターによる有酸素運動のほか、筋力トレーニング、ADLトレーニングを実施した。移植から50日後または退院時に全身評価を行った。

 リスク管理として、中止基準は意識障害を伴う合併症、酸素投与を必要とする合併症、収縮期血圧80mmHg以下の循環不全を伴う合併症、高度の疼痛を伴う合併症、著しいPSの低下(KPS40%以下)を伴う合併症、その他主治医が理学療法の実施を困難と判断した場合とした。バイタルや血液データ、患者の主観的症状から状態把握を行うとした。

 移植関連死、リハビリテーション中止、生着不全例を除いた21人についてリハビリテーション実施率を解析した。平均年齢は55.8±9.2歳。身体機能変化を解析したのは14人だった。

 その結果、無菌室管理期間におけるリハビリテーション実施率は91.3%だった。内容別の実施率は、筋力トレーニングが77.1%、有酸素運動が55.1%。平均介入日数は13.1日±4.3日だった。

 また、一般病室での管理期間のリハビリテーション実施率は98.4%。内容別の実施率は、筋力トレーニングが87.3%、有酸素運動が88.6%で、平均介入日数は17.6日±6.2日だった。

 身体機能の変化をみると、移植後50日の膝進展筋力(N・m/kg)は移植前と比べ、84.8%と有意に低下したが、移植後50日の6分間歩行距離(m)は移植前と比べて96.6%となり、有意差は見られなかった。

 さらに、無菌室での有酸素運動実施率と移植50日後の6分間歩行距離との相関関係を調べたところ、相関係数は0.641(p<0.014)で強い相関関係が確認され、移植前早期からの運動介入が重要であることが示唆された。

 立松氏は、「化学療法や放射線療法中でもリスク管理をしっかりと行えば、運動療法は実施可能で、治療早期からの積極的な介入は身体機能の維持につながる」とまとめた。また、化学療法や放射線治療の運動介入の際に重要となるのはリスク管理であるとし、前処置や移植期、生着期など、各期間で予測される経過を十分に予測した上で、多職種で情報を共有することが欠かせないと語った。