ドセタキセル投与を行う乳癌患者に対し、H2ブロッカーの前投与は手足症候群と顔面紅斑のリスクを上昇させることが示された。ドセタキセルにより惹起される皮膚毒性とH2ブロッカーとの関連性について調べた多施設共同調査の結果について、京都大学医学部付属病院乳腺外科学講座の河口浩介氏が、7月26日から大阪市で開催されている第10回日本臨床腫瘍学会で発表した。

 パクリタキセルと異なり、ドセタキセル投与時はH2ブロッカーの前投与は不要だが、日本ではH2ブロッカーの前投与がしばしば行われている。ドセタキセルは主にCYP3A4によって代謝されるが、H2ブロッカーにはそれほど高くはないもののCYP3A4阻害活性がある。

 河口氏らは、H2ブロッカーの前投与がドセタキセルによる手足症候群や顔面紅斑などの皮膚毒性を増強しているのではないかと考え、Japan Breast Cancer Research Groupに所属する施設にアンケートを送り、多施設共同調査を実施した。

 調査は、2007年4月から2008年3月に乳癌に対し術前または術後にドセタキセルで治療している患者について、ドセタキセルの用量、同時に投与した薬剤、ステロイドとH2ブロッカーの投与量と投与スケジュール、グレード2以上の手足症候群や顔面紅斑などの皮膚毒性の発生についてデータを集めた。

 その結果、20施設から993人の患者についてデータが集まった。

 患者背景を見みると、76.5%でドセタキセル投与量が75mg/m2だった。レジメンは、ドセタキセル単剤での治療が85.8%、シクロホスファミドとの併用(TC療法)が7.5%、カペシタビンとの併用(TX療法)が4.3%、トラスツズマブとの併用(TH療法)が2.4%だった。

 H2ブロッカーの前投与を受けている患者は195人(19.6%)だった。

 手足症候群の累積発生率を見ると、化学療法のサイクル数が増加するにつれ、H2ブロッカー投与群での手足症候群の累積発生率が増加した。化学療法1サイクル目ではH2ブロッカーを投与していない群が3.1%、H2ブロッカー投与群が2.1%だったが、3サイクル目ではH2ブロッカーを投与していない群が9.2%だったのに対し、H2ブロッカー投与群は20.5%となった。

 同じく顔面紅斑についての累積発生率も同様の傾向が見られ、化学療法3サイクル目ではH2ブロッカーを投与していない群が3.5%だったのに対し、H2ブロッカー投与群が14.4%となった。

 多変量解析の結果、ステロイド投与は手足症候群や顔面紅斑発生のリスク因子ではなかったが、H2ブロッカーは発生リスクを有意に上昇させる因子として抽出された。また、TC療法は、顔面紅斑のリスクを有意に上昇させたが、手足症候群の有意なリスク因子ではなかった。

 これらの結果から河口氏は、「抗癌剤を投与する際は、必ずメディカルスタッフ全員で薬剤の相互作用を十分に考慮した上で投与すべきである」と強調した。