肺癌で化学療法を施行した患者を対象とする肝炎ウイルス再活性化に関するレトロスペクティブな検討から、肝炎ウイルスの再活性化による肝機能障害が疑われる症例は認められないことが示された。7月21日から23日に横浜市で開催された第9回日本臨床腫瘍学会学術集会で、独立行政法人国立がん研究センター東病院呼吸器内科の塩澤利博氏が発表した。

 化学療法施行後にB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化が惹起され、肝炎が再燃することが、近年国内外で多く報告されている。しかし、肺癌で化学療法を施行した患者を対象とした報告は少ない。

 塩澤氏らは、HBVおよびC型肝炎ウイルス(HCV)感染を合併した肺癌患者について、化学療法施行後の肝機能障害の頻度、原因について検討を行った。

 対象は、1992〜2010年までに同院呼吸器内科で化学療法が施行されたステージIIIB、IVの肺癌患者4945人のうち、治療開始前の採血でHBs抗原陽性だった68人、HCV抗体が陽性だった203人、さらにHBs抗原とHCV抗体の両方が陽性だった15人とした。

 初診時の採血でHBs抗原とHCV抗体が陽性だった患者について、化学療法開始後の肝機能の推移を検討した。肝機能異常については、ALT値が正常上限(同院の基準値:男性0-42 IU/L、女性0-27 IU/L)の5倍以上の上昇と定義した。

 HBs抗原陽性・HCV抗体陰性の群は68人(平均年齢63歳、男性53人)、HCV抗体陽性・HBs抗原陰性の群は203人(同71歳、162人)、両方陽性の群は15人(同68歳、14人)となった。非小細胞肺癌(NSCLC)と小細胞肺癌(SCLC)の割合は、それぞれの群で、54人と14人、164人と39人、13人と2人だった。

 初診時の平均ALT値は、HBs抗原陽性・HCV抗体陰性の群で20 IU/L、HCV抗体陽性・HBs抗原陰性の群で22 IU/L、両方陽性の群で20 IU/Lだった。肝転移を認める患者は、それぞれ6人、21人、0人だった。

 化学療法施行後に肝機能異常を認めたのは計8人となった。このうち4人は原因が薬剤と考えられ、4人中3人はゲフィチニブを投与後に肝機能異常を認めた。ALT値は149〜211 IU/Lまで上昇したが、いずれもゲフィチニブの休薬後に肝機能が正常化した。


 残る4人は、肝転移の増大や腹部リンパ節転移増大に伴う閉塞性黄疸とALT値の上昇が一致していることから、原疾患の進行による肝機能障害と判断された。このうち2人ではHBウイルスの再活性化を考慮してHBV-DNAが測定されたが、いずれもHBV-DNAのウイルス量は増加しておらず、否定された。

 化学療法開始後に肝機能障害を来したのは、HBs抗原陽性・HCV抗体陰性の群では68人中6人(9%)、HCV抗体陽性・HBs抗原陰性の群では203人中2人(1%)だった。