高度催吐性リスクのレジメンであるFEC100療法において、第二世代の5-HT3受容体拮抗剤パロノセトロンは、第一世代の5-HT3受容体拮抗剤と比べて急性期嘔吐の重症度を軽減し、急性期と遅発期の悪心を抑制することが実地臨床の検討から示された。7月21日から23日に横浜市で開催された第9回日本臨床腫瘍学会学術集会で、千葉県がんセンター外来化学療法科の辻村秀樹氏が発表した。

 乳癌に対する標準治療のFEC100療法では、3週間を1コースとして、5FU 500mg/m2、エピルビシン100mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2を1日目に静脈内投与する。

 日本癌治療学会の「制吐薬適正使用ガイドライン 2010年5月【第1版】」では、高度催吐性リスクのレジメンに対し、アプレピタントの使用が推奨されている。しかし、特にリスクの高いFEC100療法では、アプレピタントにより嘔吐には抑制効果が得られるものの、悪心に対しては十分とはいえない状況である。

 辻村氏らは、遅発期の症状も抑制することで知られているパロノセトロンをFEC100療法のレジメンに組み込んでいる。さらにアプレピタントは情報を提供した上で、希望する患者、または初回に強い症状が発現した患者に2サイクル目以降から使用している。評価には、CTCAE ver.4と、Multinational Association of Supportive Care in Cancer(MASCC) antiemesis tool(MAT)を用いている。MATは患者自身による評価で、「全くなし」の0点から、「想像しうる最もひどい吐き気」などの10点まで、10段階で記入する。

 今回、辻村氏らは、FEC100療法におけるパロノセトロンの悪心・嘔吐の予防効果について、過去にグラニセトロンを投与して同様の検討を行った患者と比較検討した。

 パロノセトロンを投与した群(PAL群)は、2010年9月から2011年5月までに治療を行った72人(年齢中央値56歳、全員女性)。パロノセトロン0.75mgとデキサメタゾン6.6mgは1日目に静脈内投与し、デキサメタゾン4mgを1〜5日目に経口投与した。

 グラニセトロンを投与した群(GRN群)は、2010年1月から8月までに治療を行い、同様の検討を行った41人(同54歳、全員女性)。グラニセトロン3mgは1日目に静脈内投与、ラモセトロン0.1mgは1〜2日目に経口投与し、デキサメタゾンはPAL群と同様に投与した。

 PAL群、GRN群ともにアプレピタントを使用した患者はいなかった。

 1サイクル目の急性期嘔吐の抑制率はPAL群とGRN群で同等であったが、全体のグレード2以上の嘔吐の発現率はGRN群と比べてPAL群で有意に低く(p=0.049)、重症度が軽減される傾向が示された。

 悪心については、食事に影響を与えないグレード0〜1の割合は、急性期、遅発期ともにPAL群で高く、急性期と全体で有意差がみられた(それぞれp=0.002、p=0.02)。食事に影響を与えるグレード2以上の悪心が持続する期間の中央値は、PAL群2日(0〜19日)、GRN群4日(0〜21日)となり、パロノセトロンによる短縮が認められた。

 PAL群について、MATスコアは1サイクル目では急性期で3点、2サイクル目で2点、遅発期ではいずれも1点となり、良好な成績だった。2サイクル以降にアプレピタントの追加を希望した患者は19.4%だった。

 辻村氏は「アプレピタントとの併用や他の5-HT3受容体拮抗剤との使い分けについては、今後の検討が必要」と話した。