甲状腺濾胞癌N-RASコドン61変異例は遠隔転移を示すことが多く、予後も不良であることがわかった。7月21日から23日に横浜市で開催された第9回日本臨床腫瘍学会学術集会で、藤沢湘南台病院の深堀道子氏と神奈川県立がんセンターの吉田明氏らが発表した。

 対象は神奈川県立がんセンターで初回手術を行った甲状腺濾胞癌患者75人。患者組織のパラフィン標本からDNAを抽出して、Loop-Hybrid Morbility Shift Assay(LH)法で、H-RASとK-RAS、N-RASのコドン12/13、コドン61の遺伝子変異の有無を調べた。

 その結果、検査できた72人中37人(51.4%)でRAS遺伝子変異が見られた。H-RASコドン12/13変異は4.3%、H-RASコドン61変異が7%、K-RASコドン12/13変異は8.8%、K-RASコドン61変異が2.8%、N-RASコドン12/13変異は8.8%で、N-RASコドン61変異が36.2%と最も多かった。

 臨床病理学的因子や臨床経過との関係を見たところ、N-RASコドン12/13の変異(6例)は低分化成分を含む患者に多く(p=0.02)、再発例に多かった(p=0.06)。

 一方、N-RASコドン61変異(25例)は広汎浸潤型に多く(p=0.04)、遠隔転移例に多かった(p=0.01)。遠隔転移の有無についての多変量解析の結果、浸潤様式(微小、広汎)、N-RASコドン61変異(無、有)が有意な因子として検出された。

 またN-RASコドン61変異例の10年生存率は60%だが、変異がない例は92%で、変異例の生存率は有意に低かった(p=0.039)。このため「N-RASコドン61変異は遠隔転移と有意に関連して、予後因子としての意義を持つだろう」と述べた。

 甲状腺癌には乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫がある。全体的には進行が遅く予後は良好だが、「甲状腺濾胞癌の効果的な抗癌剤がないため、将来的には分子標的薬の開発を目指したい」と話した。