化学療法に伴う貧血に対し、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)は安全に投与でき、生命予後に影響しないことが、国内で行われた3つの無作為化臨床試験のメタ解析で明らかになった。7月21日から23日に横浜市で開催されている第9回日本臨床腫瘍学会学術集会で、近畿大学腫瘍内科の西條長宏氏が発表した。

 欧米では貧血に対する輸血回避のためESAが使用されているが、一方で複数の無作為化臨床試験でESAが患者の生命予後を悪化させる可能性が報告されている。そこで日本人において化学療法に伴う貧血に対するESAの有効性と安全性が検討された。

 解析対象は、ダルベポエチンαを用いた2試験(肺癌と婦人科癌患者207人、固形癌とリンパ腫癌123人)とエポエチンβを用いた1試験(肺癌と婦人科癌患者181人)。休薬基準ヘモグロビン濃度は12g/dL超。有効性の主要評価項目は、重度貧血発現の減少と赤血球輸血回数の減少、安全性の主要評価項目は全生存期間血栓塞栓イベントとした。なお重度貧血は、赤血球輸血施行またはヘモグロビン濃度8g/dL未満とされた。

 この結果、重度貧血の発現(5週以降)は、ESAを投与した群が22%、プラセボ群が49%であり、相対リスクが0.50(95%信頼区間 0.38-0.67)、p<0.001だった。赤血球輸血(5週以降)はESA群が9%、プラセボ群が21%で、相対リスクは0.47(同 0.29-0.76)、p<0.001だった。

 全生存期間は有意差がなく(ハザード比1.00、95%信頼区間 0.75-1.34)、1年生存率は両群ともに64%であった。またサブ解析の結果、開始時のヘモグロビン値は全生存期間に影響せず、さらにESA投与後の最高到達ヘモグロビン濃度も生存期間に影響しなかった。血栓塞栓イベントはESA群が0.7%、プラセボ群は1.7%だった。

 これらの結果から、ESA投与により重度貧血発現率および赤血球輸血率が低減され、「患者選択、ヘモグロビン濃度のモニタリング、投与調節が行われる条件下では、ESAの生命予後悪化リスクは認められなかった」と述べた。ただし「科学的には死亡リスクが増えないと証明されたわけではない」ため、承認に向けてはパブリックコメントを求めていくことになるという。