7月21日から23日の3日間、横浜市で第9回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。ASCOの後を受けて議論すべく7月の開催となった集会の抱負を、会長を務める国立がん研究センター東病院の大津敦氏に聞いた。


国立がん研究センター東病院
臨床開発センター長
大津敦 氏

――今年は学術集会がいつもの3月ではなく7月に開催されます。

大津 日本臨床腫瘍学会の学術集会は今度で9回目になりますが、これまでは主に教育を中心に実施してきました。日本における癌の薬物療法が諸外国と比べてやや遅れていたという事情がそこにはあったのですが、もうそろそろ追いついたのではないか、これからはもう一踏ん張りして世界の最先端の、オリジナルな研究を中心としていくべきではないか。それが今回の学術集会の一番の趣旨です。

 そのために、会期も従来の3月から7月に移しました。6月にASCOがありますので、3月だと素通りして良い発表がそっちに行ってしまう。ASCOでのディスカッションを受けて、それを日本で、あるいはアジアでどう考え、臨床・研究に持って行くかという位置づけの学術集会にしたい。

 ですから、国際化というのも大きなテーマです。今、癌の薬物治療の開発は1国だけでできるものではありません。ほとんどの開発は国際試験で行っていますので、そこに日本が入って中心的な役割をする。まずはアジアの中心、そして世界の中心に入って行く。

 今回の学術集会では、新しく「インターナショナルセッション」を設けました。日本人1人、そして韓国、中国、台湾といった東アジアの方1人に共同司会をお願いして、臓器別に11セッション、日本およびアジアからの情報発信を行います。今年は演題を全部指定しましたが、来年からはオリジナルの演題を出してもらうつもりです。

 また、プレナリーセッションも、日本単独、あるいは日本が中心となった国際共同研究で世界的にインパクトがあり、今年のASCO以降に公表されるものを4演題、厳正に選出しました。国内外のコメンテーターによる批評も付けて、世界へ向けて情報を発信します。

 全体の演題数も1000を超え、去年よりも5割以上増えました。会期も2日から3日に増やしました。会員数も8000人を超え、学会として次のステップを目指すところに来たということです。

――現在の抗癌剤開発のトレンドはどんなところにあるのですか。

大津 大きな流れとして、分子標的治療と個別化というのが中心になっているのは間違いありません。ただ、ここのところちょっと停滞しているというのが現状だと思います。新しい治療薬の開発のためには、いわゆるdriver geneというか、キーとなるgeneticなmutationを見つけて行く。それからワクチンであるとか、cytotoxicな薬剤でも芽が出て来ているので、そういったものを総合的に用いて成績を上げていくという方向でしょう。

 要は、遺伝子上1つの変化だけで出来てくる病気ではないということですね。1つだけを抑えてもなかなか上手くいかない。じゃあ併用すればよいかというと、今度は毒性の問題があります。そんな中で、かなり選択的に作用して毒性が抑えられるような薬剤が開発されてきています。1つひとつ着実に検証していくことが大事ですね。

 その流れの中で、非小細胞肺癌のうち5%しか対象にならないクリゾチニブがフェーズIII試験を得ずに承認申請を行ったことは、大きな意味を持っています。マーケットが小さいとなかなか開発が進みませんが、これが契機となって細かなところをねらった戦略が結構出てくるでしょう。そういった方向の研究を促進する、大きなデシジョンになるのではないかと思います。