イリノテカン(商品名:カンプト、CPT-11)の副作用発現に関与するUGT1A1の遺伝子多型について、安全性の観点からヘテロ群はワイルド群と臨床的に区別する必要はないと考えられるが、ホモ群は血液毒性の発現割合が高く、より慎重な検討と観察を要する。3月20、21日に名古屋市で開催された第7回日本臨床腫瘍学会・学術集会の一般口演で、四国がんセンター内科の仁科智裕氏が多施設共同研究の結果から報告した。

 イリノテカンの副作用発現にUGT1A1の遺伝子多型が影響を与えることが示されており、またUGT1A1*28/*28やUGT1A1*6/*6におけるグレード4の好中球減少との相関や、UGT1A1*28、*6の複合ヘテロ接合体のUGT1A1*28/*6における重大な副作用との相関が報告されている。

 対象は、切除不能な大腸癌または胃癌で、標準的な化学療法を施行後にイリノテカン単剤による治療が選択された患者82人で、2006年11月〜2008年10月に登録が行われた。ホモ群(*28、*6がホモ型またはともにヘテロ型)、ヘテロ群(*28、*6のどちらか一方がヘテロ型)、ワイルド群(*28と*6が野生型)を定義し、患者に遺伝子多型検査を行いいずれかを判断した。

 ワイルド群41人(男22人、女19人、年齢中央値62歳)、ヘテロ群20人(男10人、女10人、同63歳)、ホモ群21人(男13人、女8人、同66歳)を登録した。用量制限毒性(DLT)解析の各群の対象は、不適格例や未投与例を除外した40、20、19人となった。

 ワイルド群では用量レベル150mg/m2(固定用量)のDLTを検討し、ヘテロ群およびホモ群ではContinual Reassessment Method(CRM)により各用量レベルのDLT発現率を確定し、DLT発現率30%に最も近い用量レベルと設定した最大耐量(MDT)を検討した。第1例目の開始用量はヘテロ群100mg/m2、ホモ群75 mg/m2とし、第2例目以降は50〜150 mg/m2から選択した。

 投与期間は1サイクル2週間、2サイクルとし、1日目と15日目にイリノテカンを投与した。DLTの定義は、血液毒性はグレード4の好中球減少と血小板減少、非血液毒性はグレード3以上の下痢と発熱性好中球減少とした。

 結果として、150mg/m2の用量でヘテロ群0人、ホモ群6人であった。DLT発現率はCRMによる推定値でワイルド群2.5%、ヘテロ群5.9%、ホモ群37.4%となった。ヘテロ群では150mg/m2を推奨用量(RD)と決定した。

 ホモ群では同用量で5人にグレード4の好中球減少、1人にグレード3の発熱性好中球減少と下痢を認めた。2サイクルまでに血液毒性の発現が81.3%と高く、1人は発熱性好中球減少症からの敗血症ショックで死亡した。

 濃度時間の曲線下面積(AUC)の比は、ワイルド群、ヘテロ群、ホモ群の順に低値であった。イリノテカンの活性代謝物質SN-38のAUCは、ヘテロ群とワイルド群は同等であったが、ホモ群は高値を示し、ばらつきも大きかった。

 ヘテロ群はワイルド群と薬物動態の違いはみられたが、安全性の観点からは臨床的に区別する必要は認められなかった。一方、ホモ群では150mg/m2で忍容性および薬物動態の個体差が認められ、仁科氏は「ホモ群では150mg/m2をRDとすることは困難で、開始用量の減量や慎重な観察を考慮する必要がある」話している。