第7回日本臨床腫瘍学会学術集会が3月20日から21日までの2日間、名古屋市で開催される。進歩が著しい癌化学療法のわが国における現状が報告される。集会の会長を務める名古屋大学血液内科教授の直江知樹氏に話を聞いた。


――まず今回の学会の特徴についてお伺いしたいのですが。

直江 この数年間、日本臨床腫瘍学会は相当な勢いで大きくなってきました。この背景には、2年前のがん対策基本法施行、それから新薬の登場によって、行政、患者さん、若いドクターにも癌の化学療法が注目されてきたことがあります。さらに癌の専門医制度に対して理解が深まってきたことが後押しになっているのだと思います。

 おかげさまで一時期は1年間に1000人単位で会員が増え、現在は7000人を越える会員数になっています。注目されるのは大変ありがたいのですが、この学会が研究会から学会になったのは、わずか7年前なのです。一方、日本にはアカデミアによる基礎研究を中心とした日本癌学会、外科の先生が多く所属しわが国で最も大きな癌の学会である癌治療学会がありましたが、癌化学療法は議論の中心ではなかったのです。

 そこで、内科の医師が中心になって、質の高いエビデンスが出せるような臨床研究、それから新しい治療の導入を推進しよう、そして特に癌の薬物療法の専門医制度を作ろうということで設立された学会が日本臨床腫瘍学会です。

 今回の学会を開催する上で、急速に大きな学会になった今こそ、初心に戻ることが大切だと思いました。

――具体的にはどういうことでしょうか。

直江 まず、今まで第1会場で教育やシンポジウムを中心にやってきたのですが、今回は一般演題を重視しその会場を多くしました。日本発のエビデンスを出せるような発表がある学会にしていこうということです。応募演題の数は672題で過去最高です。その査読はきちんと行いました。残念ながらアクセプトされていないものもあります。プレナリーの演題が8題で、一般演題は157題です。優秀ポスター演題が5題、一般ポスター演題が438題になりました。単にこんな癌の患者さんがいた、こうしたら良くなったというような自画自賛、記述式、観察的、自己陶酔型の発表はエビデンスレベルが低い発表と判断し、前向き、多施設共同、治療介入研究などエビデンスにつながる研究は高いレベルの発表として評価しました。

 二つ目は、教育の充実です。臓器別には肺癌学会、呼吸器学会、血液学会、乳癌学会などそれぞれの学会があります。では癌薬物療法専門医を育てるこの学会は、何を中心に据えていくべきなのかというと、臓器横断的に充実した教育をすることが大切だと考えます。そこで、1日半、臓器横断的な教育講演を15演題実施します。

――その他に今回の学会の特色はありますでしょうか。
  
直江 今まで緩和医療に関する議論をあまりやってこなかったのですが、今回は緩和のセッションを多くしました。現在は、緩和は緩和学会に任せているという印象があります。多くの人が化学療法で生存は伸びているのですが、最終的には死亡する場合が多いのですから、緩和の問題は腫瘍内科医にとっても大切な問題です。そこで第1会場で緩和のシンポジウムを実施することにしました。さらに招へい講演に緩和医療の専門家であるJanet L. Abrahmさんをお呼びしました。

 もう一つはCOI(利益相反)です。学会の抄録集にCOIを載せましたし、発表の時は2枚目のスライドで公表する。さらにポスターにも付けるということにしました。COIの開示は最近、他の学会でも行い始めていますが、その方法については、差があります。自分が発表する演題についてのCOIだけをディスクローズすればいいという考え方と、その発表と関係ない企業からもらっている場合でもそれも公表するという二種類があるのです。さらに基礎研究は公表しなくていい、臨床研究だけでいいという考え方もあります。臨床腫瘍学会は今のところCOIの開示範囲を広く取っています。基礎研究でも出す、それから直接その研究とは関係ないものも出すという方針でいきます。

――今学会のテーマは「がんのプロフェッショナルをめざして」ですが。

直江 これも実は目玉なのですが、会長シンポジウムにしました。昨年の福岡の学会は「癌治療の均てん化」が大きなテーマでした。要するにどこの施設でも標準的な治療が受けられますようにというのが狙いでした。今回はその流れを踏襲しています。がんプロフェッショナルのあるべき姿と現状、その養成について話し合います。

 患者さんが信頼できる医療を提供するためには、腫瘍内科医が個々人のレベルで、ある程度スキルや知識を向上させていく必要があります。どんなにシステムが変わろうが、どのように医療が変わっていこうが、エビデンスというのは毎年変わるものなのですから。

 専門医を作るために現在文科省では「がんプロフェッショナル養成プラン」プロジェクトを進めている。厚生労働省も癌の専門医の育成、それから拠点の認定ということに非常に熱心です。

 そこで、シンポジウムには文部科学省高等教育局医学教育課から新木一弘課長に来ていただきますし、厚労省のがん対策推進室の前田光哉室長にも来て解説していただきます。それからマスメディアや患者さんの会の方にも語っていただきます。さらに米国Howard University Hospitalの小宮武文先生には米国の卒後臨床について語っていただきます。後は名古屋大学化学療法部准教授の安東雄一先生に、彼が行ったアンケート調査を基に、全国のがんプロプロフェッショナル養成プランの実態と問題点を指摘していただきます。

 癌のプロを目指す方向性の確認と現在走っているがんプロフェッショナル養成プランの問題点、専門医を取る時の問題点が議論されます。それから癌の薬物治療専門医を取った先生がどのようにがん拠点で働けるのかという受け入れ手側の問題も議論されるでしょう。