初発の慢性期骨髄性白血病(CML-CP)に対するニロチニブとイマチニブを評価した国際的なフェーズ3試験(ENESTnd)から、48カ月時の日本人患者の解析が行われ、これまでの報告と同様、ニロチニブはイマチニブよりも高い分子遺伝学的寛解(MMR:BCR-ABL転写レベルが0.1%以下)率と深い分子生物学的効果(MR)が得られることが示された。10月11日から13日まで札幌市で開催された第75回日本血液学会学術集会で、東京医科歯科大学血液内科の福田哲也氏が発表した。

 ENESTnd試験では、初発のフィラデルフィア染色体(Ph)陽性のCML-CP患者を、ニロチニブ300mgを1日2回投与する群(ニロチニブ300mg BID群)、ニロチニブ400mgを1日2回投与する群(ニロチニブ400mg BID群)、イマチニブ400mgを1日1回投与する群(イマチニブ群)の3群にランダムに割り付けた。追跡期間は当初5年間だったが、より長期の成績を検討するため10年間に延長された

 同試験には、35カ国、217施設から計846人が登録された。主要評価項目は達成され、12カ月時のMMR率は、ニロチニブ群で有意に良好だった(p<0.0001)。

 さらに48カ月間の追跡において、ニロチニブ群では、3カ月時のBCR-ABL転写レベルが10%以下の割合が有意に高く、より深い分子生物学的効果(MR)であるBCR-ABL転写レベルが0.01%以下(MR4)および0.0032%以下(MR4.5)の割合が有意に高く、移行期/急性転化期(AP/BC)に移行した症例も少なかった。

 福田氏らは、同試験の日本人のサブグループについて、48カ月時の解析結果を発表した。日本人患者は79人で、ニロチニブ300mg BID群30人、ニロチニブ400mg BID群24人、イマチニブ群25人だった。

 試験を中止した患者は、ニロチニブ300mg BID群6人、ニロチニブ400mg BID群8人、イマチニブ群8人で、このうち有害事象による中止は各群3人だった。用量強度の中央値は、ニロチニブの2群では全対象と日本人患者に大きな差はなかったが、イマチニブ群では日本人患者は全対象よりもやや少ない結果となった。

 同試験の主要評価項目であった12カ月時のMMR率は、ニロチニブ300mg BID群66.7%、ニロチニブ400mg BID群62.5%、イマチニブ群28.0%だった。48カ月時にもニロチニブ群の優越性は維持され、MMR率はそれぞれ86.7%、75.0%、56.0%となった。

 ただし福田氏は、中止例が多いことから、ニロチニブ群ではこれ以上の上昇は期待できない点にも言及した。

 より深い分子生物学的効果としてのMR4.5は、24カ月時にはニロチニブ300mg BID群36.7%、ニロチニブ400mg BID群25.0%、イマチニブ群12.0%だった。48カ月時のMR4.5もニロチニブ群で高い傾向にあり、それぞれ53.3%、45.8%、36.0%となった。

 AP/BCに移行した日本人患者は各群1人で、24カ月以内の移行だった。CMLと関連する死亡は各群1人、CMLと関連しない死亡はニロチニブ400mg BID群の2人だった。

 試験治療薬に関連する非血液毒性では、皮疹はイマチニブ群と比べてニロチニブ群で多く観察された。36-48カ月時までの1年間に、ニロチニブ群では新たな非血液毒性が報告されなかったのに対し、イマチニブ群では結膜出血と末梢浮腫が各1人で報告された。

 グレード3/4の血液毒性は、イマチニブ群で多く観察された。36-48カ月時までの1年間では、ニロチニブ群の1人でリンパ球減少が報告された。長期の投与により新たな血液毒性が発生する可能性は低いと考えられた。

 臨床検査値の異常は、36-48カ月時までの1年間に、ニロチニブ群で高ビリルビン血症と高血糖が各1人、リパーゼの上昇が2人で報告された。イマチニブ群では低リン酸血症が1人で報告された。

 心血管事象について、全対象では、イマチニブ群と比べてニロチニブ群で末梢動脈閉塞症(PAOD)、虚血性心疾患、虚血性脳血管疾患の発生頻度が高く、36-48カ月時にも発生した。日本人患者では、ニロチニブ群で12-36カ月時までに脂質代謝異常が多く発生し、狭心症がニロチニブ400mg BID群の1人、PAODがニロチニブ300mg BID群の1人で報告された。

 福田氏は「日本人患者におけるニロチニブとイマチニブの安全性プロファイルは、全対象と同様だった。心血管事象の発生はまれであるが、ニロチニブ群で多い傾向にあり、危険因子の管理や注意深い観察が必要」とした。