同種造血幹細胞移植の予後は、レシピエントの性別と幹細胞源により影響を受けることが示された。特に、レシピエントが女性の場合、幹細胞源に関わらず、性別が一致したドナーを選択することが重要である可能性が示唆された。10月11日から13日まで札幌市で開催された第75回日本血液学会学術集会で、広島大学原爆放射線医科学研究所放射線災害医療研究センター血液・腫瘍内科研究分野の大島久美氏らが発表した。

 同種造血幹細胞移植において、ドナーとレシピエントの性別の不一致が患者予後に与える影響については、いまだ議論されている。

 そこで大島氏らは、同種造血幹細胞移植において、性別の不一致が与える影響についてレトロスペクティブに検討した。

 解析対象は、1995年1月から2010年12月までに国内で同種造血幹細胞移植を実施した1万4615人の成人患者(男性8558人、女性6057人)。日本造血細胞移植学会の移植登録一元管理プログラム(TRUMP)を利用した。

 患者は、急性骨髄性白血病(AML)は50%、急性リンパ性白血病(ALL)は24%、慢性骨髄性白血病(CML)は12%、 骨髄異形成症候群(MDS)が14%。年齢中央値は42歳(範囲:16-85歳)。幹細胞源は、血縁者間骨髄移植(rBMT)が17%、血縁者間末梢造血幹細胞移植(rPBSCT)が20%、非血縁者間骨髄移植(uBMT)が48%、臍帯血移植(CBT)が15%。

 まず最初に、女性ドナーから男性レシピエント移植群(以下、女性→男性移植群)とそれ以外の移植患者[男性ドナーから女性レシピエントへの移植群(以下、男性→女性移植群)とドナーとレシピエントの性別が一致した群(以下、性別一致群)]の2群に分けて解析した。

 その結果 移植後100日時点のグレード2〜4の急性の移植片対宿主病(GVHD)の発現率は、女性→男性移植群が41.8%だったのに対し、男性→女性移植群+性別一致群が41.6%と有意差はなかった(p=0.86)。5年再発率にも有意差はなく、それぞれ34.8%、35.9%だった(p=0.44)。

 一方、移植1年時点の慢性GVHDの発現率は、女性→男性移植群が54.0%だったのに対し、男性→女性移植群+性別一致群は44.0%と有意に低かった(p<0.001)。

 また、移植後5年時点の移植関連死亡率は、女性→男性移植群が39.2%だったのに対し、男性→女性移植群+性別一致群は31.5%(p<0.001)、5年生存(OS)率はそれぞれ39.8%、44.7%%で有意差が見られた(p<0.001)。

 これらの結果を踏まえ大島氏らは、さらに詳細に検討するために4群に分けて解析した。

 解析対象を4群に分け、男性ドナーから男性レシピエントへの移植(以下、男性→男性移植群)が5229人(36%)、女性ドナーから女性レシピエントへの移植(以下、女性→女性移植群)が2776人(19%)、男性→女性移植群が3281人(22%)、女性→男性移植群が3329人(23%)とした。

 まず男性レシピエントについて多変量解析を行うと、CBT以外の同種造血幹細胞移植において、男性→男性移植群と比べ、女性→男性移植群の慢性GVHDリスクは有意に高かった。rBMTにおけるハザード比は1.63、rPBSCTは1.30、uBMTは1.13だった(それぞれp<0.001、p=0.001、p=0.03)。

 また、rBMTとrPBSCTにおいて、男性→男性移植群と比べ、女性→男性移植群の移植関連死亡のハザード比はそれぞれ1.25、1.39、再発のハザード比はそれぞれ0.77、0.72で有意差が見られた。

 だが、男性レシピエントにおけるドナーとの性別不一致は、OSに有意な影響を与えなかった。

 次に、女性レシピエントについて多変量解析の結果を見ると、女性→女性移植群と比べ、男性→女性移植群では、rBMTを除き、全ての同種造血幹細胞移植において、重篤な急性GVHDのリスクを上昇させた。rPBSCTのハザード比は1.50、uBMTは1.35、CBTは1.58だった(それぞれp=0.01、p=0.004、p=0.03)。

 また、rPBSCTにおいて、女性→女性移植群と比べ、男性→女性移植群の慢性GVHDのハザード比は0.77と有意差が見られた(p=0.008)。

 rBMTとrPBSCTにおいては、女性→女性移植群と比べ、男性→女性移植群の移植関連死亡のハザード比はそれぞれ1.59、1.61、OSのハザード比はそれぞれ1.30、1.40と有意に不良だった。

 性別や幹細胞源の違いが同種造血幹細胞移植の予後に影響を与えたことについて大島氏は、「女性→男性移植群の方が、同種間移植よりも予後が不良であることは、男性特有のHY抗原による免疫反応の影響であると推測される。今後は、女性ドナーから男性レシピエントへの臍帯血移植においてHY抗原が果たす免疫反応の役割についてさらなる研究が必要。また、男性→女性移植群よりも女性同士の移植の方が予後が良好だったことについても解明が求められる」と説明した。

 全ての結果を踏まえ大島氏は、「同種造血幹細胞移植において性別不一致が予後に与える影響は、レシピエントの性別と幹細胞源によって異なることが明らかになった。これらの結果から、特にレシピエントが女性の場合は、幹細胞源に関わらず、性別が一致したドナーを選択することが重要であることが示唆された」と語った。