慢性骨髄性白血病(CML)患者の生命予後は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の登場により著明に改善した。しかし、TKIで治療中のCML患者の健康関連QOL評価から、患者は日常生活の制限や軽い労作でもつらさを感じ、特に女性では気分の落ち込みや不安、若年者では日常生活の制限や経済的な不安が強いことが示された。これらの感覚にTKIの種類による有意差はなかった。10月11日から13日まで札幌市で開催された第75回日本血液学会学術集会で、広島大学原爆放射線医科学研究所血液・腫瘍内科の今川潤氏が発表した。

 CMLはTKIの登場により「慢性疾患」に近い臨床像へと変貌している。CML診療においても、患者側に立脚したQOL評価の重要性が高まっている。

 今回の検討の対象は、広島県の4施設のいずれかに通院中で、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブで治療中のCML患者78人だった。今川氏らは、日常生活や自覚症状、服薬状況に関する質問用紙を手渡し、無記名での回答を得た。質問事項は国内外の報告や臨床での経験などから検討し、独自の質問票を作成した。比較のため、同じ質問をCMLに罹患していない一般人142人からも回答を得て、これをコントロール群とした。患者群とコントロール群に、CML以外の合併症(高血圧や高脂血症など)の有症率に有意差はなかった。

 患者群では65歳以上が53%、男性が62%を占めた。イマチニブは16人(20%)、ニロチニブは13人(17%)、ダサチニブは49人(63%)に投与されており、服薬期間中央値はそれぞれ48カ月、11カ月、18カ月だった。薬剤の種類による服薬アドヒアランスに有意差はなく、飲み忘れは「ほとんどない」と回答した患者は70%前後だった。

 CMLと診断されてから、日常生活、仕事・学業、人間関係、精神的ストレスなどが悪化したとする患者は10-36%だった。コントロール群と比較すると、患者群では日常生活(買い物や移動など)に制限を感じており(p<0.001)、特に65歳未満の若年者で強かった(p=0.003)。仕事・家事・学業においても、患者群で制限を自覚する傾向がみられた(p=0.07)。TKIの種類による有意差はなかった。50歳代の患者3人は、CMLのために休職または勤務時間の制限を強いられていると回答した。

 日常生活の労作を3段階に分けた検討では、「安静、ゆっくり歩く」といった軽い労作でも、患者群はコントロール群と比べて有意につらいと感じていた(p<0.001)。「階段、物を持ち上げる」、「スポーツ、ジョギング」でも同様だった(いずれもp<0.001)。TKIの種類による有意差はなかった。

 今川氏は「運動能の低下を自覚することは、QOLに直結する重要な問題」と指摘した。

 気分の落ち込みや不安は、患者群ではコントロール群と比べて強く(p=0.006)、特に女性患者で強かったが(p<0.001)、人間関係のトラブルへの影響はなかった。

 TKIの薬剤別に自覚症状をみると、週2-3回以上感じると答えた患者が最も多かったのは、筋痙攣(イマチニブで56%)、発赤などの皮膚症状(ニロチニブで38%)、だるさ・疲れ(ダサチニブで41%)だった。イマチニブからダサチニブに切り替えた患者(25人)では、消化器症状、筋痙攣、手足のむくみの軽減が認められた。

 服薬状況と自覚症状との関連をみると、月に数回以上飲み忘れると答えた患者(18人)では、飲み忘れがないと答えた患者(53人)と比べて、痛み、便秘、性機能の低下を自覚する割合が有意に高かった(それぞれp=0.02、p=0.03、p=0.03)。これらの症状を自覚する患者は服薬アドヒアランスが不良である可能性があるが、TKIの有害事象と関連するか否かは不明である。

 治癒・休薬に期待する患者は若年者で強かった(p=0.006)。その理由として、副作用だけでなく、経済的な問題をあげる患者が約60%に上った。

 今川氏は「今回の結果をふまえ、今後、よりTKIに特異的な質問票を作成していけたらと考えている」と述べた。