日本血液学会は現在、「造血器腫瘍診療ガイドライン」の作成を進めている。臨床試験によるエビデンスを中心に、日常診療でのコンセンサスに基づいたガイドラインになる予定だ。草稿が完成し、会員向けにウエブ上で公開され、来月11月11日までパブリックコメントを募集している。概要と各疾患ガイドラインの特徴について、10月19日から京都市で開催された第74回日本血液学会学術集会のパネルディスカッションで発表された。

 一般にガイドラインはEBMに基づいて作成されるが、造血器腫瘍ではフェーズ3試験で有効性が検証された治療法は限られており、特に日本人を対象としたエビデンスは少ない。そのため造血器腫瘍診療ガイドラインでは、臨床試験で得られたエビデンスに加え、日常診療における統一したコンセンサスの有無から推奨グレードが設定された。

 ガイドラインにもうけられたクリニカルクエスション(CQ)には、5段階の推奨グレードが提示される(1、2A、2B、3、4)。NCCNガイドラインの推奨グレードを参考にしているが、NCCNにはない「カテゴリー4」(無効性あるいは害を示すエビデンスがあり、行わないよう勧められる統一したコンセンサスが存在する)を導入した。

 また作成手順の中で集められた臨床研究は、そのエビデンスの質を、米国国立癌研究所の癌情報データベース(NCI-PDQ)の評価法を用いて、各研究のデザイン(無作為化試験、症例集積研究など)とエンドポイント(全生存率、QOLなど)の視点から評価された。引用された論文には構造化抄録をつけ、ウエブ版で公開される。

 パネルディスカッションではガイドライン作成手順に続き、白血病、リンパ腫、骨髄腫、支持療法について、ガイドラインの特徴が解説された。

 その中で、リンパ腫については、WHO分類に基づき、主要な10疾患について合計70のCQが診療ガイドラインにもうけられている。悪性リンパ腫の特徴として、稀少病型が多いため、高いエビデンスレベルの推奨治療がある疾患は限られており、ガイドラインで取り上げなかった病型も多いと、解説にあたった愛知県がんセンター中央病院血液・細胞療法部の木下朝博氏は話した。そのため「今後、日本からエビデンスを創出することが望まれる」と述べた。

 骨髄腫では、推奨レベルの判定に、寛解導入療法では無増悪生存(PFS)あるいは進行までの期間(TTP)を延長するエビデンスが、維持療法や地固め療法では有害事象やコストに見合った全生存(OS)の延長効果が重視された。

 また新規薬剤を含む多剤併用療法(VAD、VTD、CVDなど)は、日本における厳密な推奨用量の決定が行われた臨床試験が少ないため、「施設のIRBの承認や患者へのインフォームドコンセントなど、日常診療として行う場合は十分な注意が必要である」と、解説にあたった群馬大学大学院保健学研究科の村上博和氏は述べた。

 さらに自家移植後の維持療法については、OS延長効果が明らかでないこと、副作用や合併症のリスクがあることから、ガイドラインではカテゴリー2B(比較的低レベルのエビデンスに基づく推奨で、統一したコンセンサスは存在しない。ただし大きな意見の不一致もない)とし、臨床試験で行うことが推奨される。

 ガイドライン疾患別作成委員会事務局で、ガイドラインの作成手順について解説した東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科の南谷泰仁氏は「このガイドラインは日本の血液がん診療レベルの向上に非常に役に立つと期待される」と語った。