非血縁者間の同種造血幹細胞移植(HSCT)におけるHLAのDNA型(アレル)の不一致と予後との関係について検討した結果、HLAアレルの違いによる予後への影響は同程度だったことが報告された。日本造血細胞移植学会(JSHCT)のHLAワーキンググループを代表し、自治医科大学付属さいたま医療センターの神田善伸氏が、10月21日まで京都市で開催された第74回日本血液学会学術集会のプレナリーセッションで発表した。

 非血縁者間のHSCTは、血縁者間の場合と比べ、重篤な移植片対宿主病(GVHD)を引き起こし、予後が悪化すると考えられている。これは、HLAアレルの不一致が原因の一つであると推測されている。1990年代ではHSCT前にHLA-DRB1の情報のみ入手可能だったが、2000年以降ではHLA-A、HLA-Bについても調べることが可能となり、GVHD予防の観点に影響を与えた可能性が指摘されている。これまでの報告では、HLA血清型(HLA-A、HLA-B、HLA-DR)が一致した非血縁者間HSCTにおいて、HLAアレルのうちHLA-AまたはHLA-Bが不一致だった患者の全死亡率は、HLA-CまたはHLA-DRB1が不一致の患者よりも不良であったことが報告されている。

 そこで、神田氏らは、最近のコホートをもとに、非血縁者間のHSCTにおいて各HLAアレルの不一致が、予後に与える影響について検討した。
 
 対象は、16歳以上で、1993年から2009年に急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病により非血縁者間HSCTを実施した患者(血清型でHLA-A、HLA-B、HLA-DRが一致)で、全てのHLAアレルデータ(HLA-A、-B、-C、-DRB1)がそろっているものとした。造血細胞移植登録一元管理プログラム(TRUMP)のデータから、3003人のデータを解析した。

 主要評価項目は、非血縁者間HSCT後の全生存(OS)。全ての統計処理は、神田氏らが開発した医療統計フリーソフトEZRで解析した。HLAアレルが全て一致している患者は1966人、HLA-Aのみ不一致だった患者(以下、HLA-A不一致群)は187人、HLA-B不一致群は31人、HLA-C不一致群は524人、HLA-DRB1不一致群は295人だった。

 多変量解析を行ったところ、移植初期(1993-1999年)における全死亡ハザード比は、HLA-B不一致群で2.47(95%信頼区間:1.16-5.24)となり、HLAアレルが全て一致している患者と比べ、有意に全死亡率が増加した。

 一方、移植後期(2000-2009年)における全死亡ハザード比は、HLA-C不一致群が1.35(95%信頼区間:1.15-1.59)、HLA-DRB1不一致群が1.45(同1.20-1.75)となり、HLAアレルが全て一致している患者と比べ、有意に予後不良だった。神田氏は、移植後期における各アレルの全死亡ハザード比が1.24〜1.45と数値が近かったことに触れ、「HLAアレルの不一致がHSCT後に与える負の影響は、各HLAアレルで同程度だった」とした。

 また、移植後期においてのみ、HLA-C不一致群とHLA-DRB1不一致群の予後が有意に不良だったことについて神田氏は、「1990年代はHLA-DRB1の不一致のみが移植前に判明していたので、HLA-DRB1不一致例でGVHD予防法が強化されていたが、逆に2000年代はHLA-DRB1の不一致よりもHLA-A、HLA-Bの不一致が重要視されるようになったことが影響しているのではないか」と指摘した。

 グレード3または4の急性GVHDの累積発症率を調べたところ、移植初期においては、HLA-C不一致群のハザード比が2.02(95%信頼区間:1.27-3.20)と有意に上昇。移植後期においては、HLA-A不一致群のハザード比が1.72(同1.07-2.77)、HLA-C不一致群が1.51(同1.12-2.02)、HLA-DRB1不一致群が1.45(同1.01-2.09)で有意差が見られた。HLA-B不一致群のみ有意差が見られなかったことについて神田氏は、解析した患者数が少ないことが影響した可能性があると考察した。

 今回の解析結果を踏まえ神田氏は、今後、日本における非血縁者間HSCTのドナーを選択する際の基準を検討する必要があると指摘。「非血縁ドナーを選択する際、これまでの報告に基づき、HLA-A、HLA-Bが一致したドナーを優先する傾向にあったが、今後のドナー選択ではHLA-A、HLA-B、HLA-DRB1の不一致を同等に扱うべきであろう」と語った。