第73回日本血液学会学術集会が10月14日から16日までの3日間、名古屋市で開催される。会長を務める名古屋大学血液・腫瘍内科学教授の直江知樹氏に、今回の学術集会のプログラムについて話をうかがった。


──今回の日本血液学会学術講演会に込められた思いをお聞かせください。

直江 元々日本には、日本血液学会と日本臨床血液学会の2つの学会がありました。十年前から、それぞれ別々に実施するよりも、国際化のために日本の「窓口」として一本化、最先端の情報が集まる学会にしよう、そしてもっと領域をまたいだ教育を重視しよう、という気運が高まり、何度か同時期に開催する期間を経て、4年前に1つの学会になったという経緯があります。

 そこで、今回の学術講演会では、まず「知識を整理する」ことを1つ目のポイントとしました。学術講演会は最先端の知見を発表し合う場ですが、最近は、ともすれば専門領域に入り込み、他の領域の情報を得る機会が減りがちです。基礎研究と臨床の間にも溝が生まれてしまいます。専門領域の情報を得るだけならば、今やインターネットなどでも入手可能です。学術講演会に参加するのですから、幅広く最先端の情報を入手する場として欲しいし、他の領域の最先端の知見を学ぶ機会として欲しいと思います。知識を整理し、アップデートすることで、自分の今後の研究や臨床に役立ててほしい。

 そのため、教育講演を最も広い第1会場と第3会場で行うようにしました。是非とも多くの方に参加していただきたいと思います。

 2つ目は「国際化」です。近年、国際化が叫ばれるようになって久しいのですが、なぜこれが重要なのか。それは、医療そのものは国民性や社会制度などに依存する割合の高い「domestic」なものですが、薬や情報は「モノ」なので国境は関係ないからです。血液疾患診療の多くを占めるのは薬物治療ですから、薬剤の情報が重要です。薬剤とその情報は世界各地で生まれ、国境を越えて行き来しますから、我々は海外で得られた最新の情報も積極的に取り込んでいく必要がありますし、我々が得た知見を海外に向けて発信していく必要があるのです。

 米国血液学会(ASH)や欧州血液学会(EHA)とのジョイントシンポジウムでは、共にテーマの選択について議論し、演者を選んでいただいています。また、アジアンワークショップについても、韓国の医師に司会をお願いしていますし、演者の選定にも関わってもらっています。シンポジウムも多くは英語で行います。海外の情報を入手し、海外へ発信していく場になれば、と思っています。

 3つ目は「双方向」です。忙しい中で学術講演会に参加するのですから、自分の発表をして終わりなのではなく、意見を交わす機会にすべきです。そのため、Pro Conのセッションとしてシンポジウム7を設定しましたので是非ご参加いただきたいといます。また、朝8時から50分間、若手を対象とし、講師と20名の参加者が議論できるよう設定したMeet the Expertは予約制としていますが、非常に好評を頂いているようです。

──血液がん治療の現状を先生はどうお考えでしょうか。

直江 日本血液学会は、名古屋大学で私の先輩にあたる勝沼精蔵先生が設立した学会で、第1回の学会長を務められました。勝沼先生は、大正8年に33歳で教授に就任されて以降、さまざまな分野に功績を残されていますが、血液学に特に造詣が深い先生でした。

 血液の研究材料としての扱いやすさもあり、多くの研究結果を残されましたが、当時、勝沼先生が残された記録に、「急性骨髄性白血病は診断とともに残酷な予言をしなければならないことが残念だ」という記述が残っています。まだ多くのことが分からないし、できることが限られていた時代でした。

 今は新しい薬剤が登場し、長期寛解が得られる例も見られるようになりました。こうした結果は多くの研究から得られた成果です。

 ただ、まだまだCureには至っていません。「新薬によって生存期間が5年間延長するようになりました。さらに有効な新薬が登場して生存期間が6年に延長しました」。こうして医療側が胸を張って治療を提供します。ただ、「延びた1年間は通院する期間が延びただけでした。しかも医療費は高額です」というのでは、患者は複雑な思いでしょう。Cureが当面は難しくても、せめて「therapy off」の期間をもっと延ばしていく必要があります。まだまだ薬物治療は進歩すべきですし、そのほかのmodalityももっと研究していくべきでしょう。我々にはさらなる研鑽が必要なのです。