同種造血幹細胞移植において、50歳台の患者では骨髄破壊的前処置(myeloablative conditioning:MAC)と骨髄非破壊的前処置(reduced-intensity conditioning:RIC)のいずれも選択肢となりうる。この年代の日本人患者のレトロスペクティブな検討から、全生存割合(OS)、非再発死亡(NRM)、再発割合はほぼ同等であることが示された。9月24日から26日まで横浜市で開催された第72回日本血液学会学術集会のシンポジウム「移植実施前の考察〜ドナー選択から前処置選択まで〜」で、神戸大学医学部附属病院腫瘍・血液内科の薬師神公和氏が発表した。

 MACを用いたフル移植が困難な高齢者や臓器障害を有する症例に対して、RICを用いたミニ移植が選択されるようになり、同種造血幹細胞移植件数は近年増加している。

 海外の研究では、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群(MDS)の患者のNRMはMACで高く、再発割合はRICで高く、OSはほぼ同等であることが示されている。

 MAC、RICともに選択肢となりうる50歳台の日本人患者では、どちらがより適しているのか。薬師神氏は、国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科の福田隆浩氏との共同研究で、50〜59歳に対象を絞り、日本造血細胞移植学会(JSHCT)の一元化データベースを使用しレトロスペクティブに検討した。

 対象は、1997〜2008年に初回同種造血幹細胞移植が実施された、AML、ALL、MDSの患者。従来型の全身照射とシクロホスファミドを投与するTBI-CY、これにシタラビンを併用するTBI-CA-CY、ブスルファンとシクロホスファミドを投与するBu-CYを用いたMAC群は806人(年齢中央値53歳)、フルダラビン/クラドリビン(Flu/2-CdA)を含む骨髄非破壊的前処置を用いたRIC群は944人(同56歳)となった。

 観察期間の中央値は748日だった。ALL ではMACを選択することが多く、AMLとMDS ではRICを選択することが多かった。ドナーは、MAC群ではHLA-A、B、DRが5/6以上一致している血縁ドナーが多く、RIC群では非血縁骨髄と臍帯血が多かった。

 患者年齢の分布をみると、MACは50歳台前半、RICは後半に多かった。

 50〜59歳全体では、2年OSはMAC群44%、RIC群46%、2年NRMは36%と34%となり、いずれも有意差はなかった。再発割合も37%と40%で有意差はなかった。

 MAC群について、TBI-CYまたはTBI-CA-CYとBu-CYを比較すると、2年OSに有意差はなかったが、2年NRMはTBI-CYまたはTBI-CA-CYが39%、Bu-CYが29%で有意差がみられた(p=0.01)。再発割合に有意差はなかった。

 ドナー別の比較では、MAC群の2年NRMは臍帯血で有意に多く(p=0.002)、これを受けて2年OSも臍帯血で有意に低かった(p=0.03)。RIC群の2年NRMも臍帯血で有意に多く(p=0.002)、2年OSも臍帯血で有意に低かった(p=0.0001)。

 さらに今回の検討では、53歳以上の患者においてはMAC群で2年NRMが有意に多く(p=0.01)、2年OSが有意に低いこともわかった(p=0.02)。

 53歳以上の2年NRMは、MAC群のTBI-CYまたはTBI-CA-CY、RIC群、MAC群のBu-CYでそれぞれ46%、34%、32%となり、TBI-CYまたはTBI-CA-CYで有意に多かった(p=0.0003)。2年OSは、RIC群45%、Bu-CY 42%、TBI-CYまたはTBI-CA-CY 38%の順に高かった(p=0.02)。再発割合に有意差はなかった。

 現在、国内におけるAML、MDS、ALLに対する造血幹細胞移植のNRMの年次推移についての検討も進めており、今後の米国血液学会(ASH)などで発表される予定だ。