多発性骨髄腫(MM)患者の治療において、デキサメタゾン大量療法後にプロテアソーム阻害剤のボルテゾミブを早期に開始すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長することがレトロスペクティブな解析から示された。横浜市で開催された第72回日本血液学会学術集会で、社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会中津病院血液内科の小坂さおり氏が発表した。

 ボルテゾミブは再発または難治性のMM患者を対象として、2006年に国内でセカンドライン以降の使用が承認された。これに対し、海外ではup-frontでの使用が生存に寄与することが証明されている。

 小坂氏らは、初回治療としてデキサメタゾン大量療法を数コース施行した後、できる限り早期にボルテゾミブを追加投与する試みを一部の症例に対して行い、その治療成績をレトロスペクティブに検討した。

 対象は、2006年4月〜2010年5月に同院で化学療法を受けたMM患者57人。

 施行された治療により、患者を次の3群に分類した。すなわち、デキサメタゾン大量療法を1コース施行後、速やかにボルテゾミブ+デキサメタゾン療法に移行したI群(up-front群)、通常化学療法に対し再発・難治性となった時点でボルテゾミブ+デキサメタゾン療法を施行したII群(relapse/refractory群)、ボルテゾミブを使用せず通常の化学療法のみを続行したIII群(no Bor群)である。

 その結果、I群21人(うち男性9人、年齢中央値64.0歳)、II群18人(同11人、65.0歳)、III群18人(同18人、76.5歳)となった。3群間で、免疫グロブリンのタイプ、病期分類(Durie&Salmon Stage)、国際病期分類(ISS)に明らかな差は認められなかった。

 II群(ボルテゾミブ開始前)とIII群で施行された化学療法は、MP(メルファラン、プレドニゾン)療法が最も多く、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)療法がこれに次いだ。また、年齢の高いIII群では自家末梢血幹細胞移植(APBSCT)は施行されておらず、II群では5例に施行されていた。

 ボルテゾミブの投与は原則として保険承認の用法・用量に従い、1日1回1.3mg/m2を週2回、2週間(1、4、8、11日目)投与し、次の10日間は休薬する3週1サイクルとした。ボルテゾミブによる治療サイクルの平均は、I群、II群とも4サイクルだった。

 奏効率はI群89.5%、II群82.4%で明らかな差は認められなかった。非常に良い部分寛解(VGPR)以上となったのは、I群31.6%、II群17.6%だった。観察期間終了時に治療効果が継続している症例はI群で多かった。

 ボルテゾミブ開始時からのPFSは、II群に比べてI群で有意に良好だった(p=0.029)。1年PFSはI群57.2%、II群25.5%だった。

 観察期間が短かったため、初回治療開始時からの全生存率(OS)について3群間に有意差はみられなかったが(p=0.403)、I群では改善傾向がみられた。2年OSはI群95.2%、II群86.7%、III群69.6%だった。