転移部位が肝臓のみの大腸癌に対するネオアジュバント療法として、肝動注と全身化学療法の併用療法は有力な治療戦略となりうるが、至適レジメンはなお検討を要すると考えられる結果が示された。7月13日から15日に名古屋市で開催された第66回日本消化器外科学会総会で、東海大学医学部消化器外科学の鈴木俊之氏が発表した。

 大腸癌肝転移に対する肝切除後の再発は残肝再発が最も多いが、肺を含む他臓器再発も多く認められる。鈴木氏らは、肝切除後に診断された肺転移は肝切除の1年以上前に増殖を開始していること、大腸癌ではステージIでも30%に末梢血中に癌細胞が検出されることをすでに報告している。

 成績改善には、検査上明らかな肝転移巣以外の微小転移に対する治療が必須と考えられる。鈴木氏らは、転移部位が肝臓のみの症例に対し、ネオアジュバント療法として全身化学療法と局所療法の肝動注の併用療法を行っており、その成績を報告した。

 対象は、転移部位が肝臓のみで、原発巣のステージや無再発期間、肝転移個数などで判断するClinical risk score(CRS)で肝切除後の予後不良因子を2因子以上有する患者。2005年10月から2007年7月までに肝動注とFOLFOXを併用した25人をA群、2007年8月から2010年3月までに肝動注とFOLFOX+ベバシズマブを併用した14人をB群とした。

 治療は4週を1コースとし、肝動注では5FU 250mg/日とロイコボリン25mg/日を1〜7日目、15〜21日目に投与した。全身化学療法ではFOLFOX4を1〜2目に投与し、B群にはさらにベバシズマブ5mg/kgを2週ごとに投与した。4〜6カ月後に手術適応を判断した。

 A群(年齢中央値65歳、男性17人)とB群(同64歳、8人)に、肝転移の同時性/異時性、肝転移個数、原発巣切除時のリンパ節転移の有無、前治療の有意差はなかった。

 FOLFOXの投与コース数の中央値は両群で5コースだった。肝動注施行回数は中央値でA群9回、B群3回で、有意にB群で少なかった(p<0.01)。肝動注の中止理由である肝動脈の閉塞や狭窄は、A群5人、B群10人に発生し、有意にB群で多く(p<0.01)、長期間の継続が困難となった。またB群の5人に創傷治癒遅延が認められた(p<0.01)。

 奏効率はA群84%、B群93%、無増悪生存期間(PFS)はA群11.2カ月、B群16.3カ月となったが、いずれも有意差はなかった。
 
 転帰として、治療開始後に進行(PD)を認めたのはA群13人(52%)、B群4人(29%)で有意差はなかった。A群の8人(32%)に他臓器転移、5人(20%)に肝転移を認めた。B群ではそれぞれ1人(7%)と3人(21%)だった。

 肝切除またはRFAが施行可能となったのは、A群11人(44%)、B群9人(64%)で、有意差はなかった。 

 グレード3以上の有害事象では好中球減少が最も多く、A群では44.0%、B群では28.6%に発現したが、有意差はなかった。

 全39人のPFSの中央値は14.1カ月、全生存期間(OS)の中央値は36.0カ月となった。

 肝動注とFOLFOX+ベバシズマブの併用療法は、従来の肝動注とFOLFOXの併用療法と比べて、奏効率は同等、PFSは延長、全身的な有害事象はほぼ同等だった。ただし、肝動注の継続は困難となり、鈴木氏は「肝動注とベバシズマブの併用は避けるべき」と話した。