腹腔鏡下と小開腹での操作を組み合わせた腹腔鏡補助下肝切除術(LAH)は、完全腹腔鏡下肝切除術(PLH)への橋渡しとなる術式であり、多くの術式に対応できると考えられる。7月13日から15日に名古屋市で開催された第66回日本消化器外科学会総会で、岩手医科大学医学部外科学講座の新田浩幸氏が発表した。

 新田氏らは、1997年3月から2011年6月までに、計238例の腹腔鏡(補助)下肝切除術を行った。対象疾患には、転移性肝癌(105例)や肝細胞癌(78例)などの他、良性疾患や生体肝移植ドナー(28例)の肝切除術などが含まれた。

 238例中、PLHが行われた126例では主に部分切除や外側区域切除が、LAHが行われた112例では主に葉切除などの大きな肝切除が行われた。現在同科では、葉切除のPLHへの移行が進められている。

 LAHは、肝の授動を腹腔鏡下で行った後、肝離断を約8cmの小開腹から腹腔鏡補助下で行う術式。小開腹は整容性を考慮して右肋骨弓下に行われていたが、筋肉の横断を回避するため、上腹部正中切開に変更されている。LAHのメリットには、創が必要最小限であること、精緻な授動操作が可能なこと、開腹手術(以下、開腹)と比べて助手や手術スタッフと視野が共有できること、安全性が担保されていること、多くの術式に対応できること、肝臓外科医が導入しやすいことがある。デメリットは、患者の体型により手術の難易度が左右されることだ。

 新田氏らは、近年行った右葉切除について、開腹、LAH、PLHを比較した。開腹の適応は腫瘍が大きい場合や横隔膜浸潤(または疑い)がある場合で、対象は肝細胞癌または転移性肝癌の10例。LAHの対象は肝細胞癌、転移性肝癌、良性肝疾患の10例、PLHの対象は転移性肝癌、良性肝疾患の2例だった。

 手術時間の平均は、開腹が166.4分、LAHが269.5分、PLHが319.0分で、開腹と比べてPLHは約2倍となった。出血量の平均は、それぞれ482.0mL、543.1mL、76.5mLで、開腹とLAHはほぼ同等、PLHは少なかった。術後在院日数の中央値は、開腹で7日、LAHで9日、PLHで18日となった。PLHでは1例に胆汁漏を認めたため、延長した。

 LAHは、術中の肝精査が必要で切除箇所が多い多発性転移や、離断面の広い肝切除術に選択された。ただし、肝臓が肋骨に深く隠れている場合や体幹が厚い場合には手術の難易度が上昇し、出血量の増加や手術時間の延長がみられた。一方、PLHでは体型の変化による難易度の変化は小さいが、離断面の不整がある場合や離断面が広い場合に大幅な手術時間の延長を生じた。

 現時点で、安全に、確実に、速やかに施行できるのは、LAHでは複数の部分切除(多発肝転移)、亜区域切除、中央区域切除、葉切除(ドナーの手術を含む)、胆管切除を伴う肝切除であり、PLHでは部分切除、外側区域切除であると考えられる。安全性が最も担保される必要がある生体肝移植ドナーの肝切除は、LAHが適していると考えられる。

 開腹と比べた場合、現時点でのLAHのメリットは整容性、ひいては患者の満足度となる。

 同科では葉切除がLAHからPLHにスムーズに移行できていることから、新田氏はLAHの現状での位置づけについて、「PLHへの橋渡しとなる術式であり、多くの術式に対応できる。今後、PLHは葉切除などへ術式が拡大されることが予想される」と述べた。