大腸癌でストーマを造設した患者の検討で、ストーマ周囲の強い色素沈着はS-1を投与したケースで多いことが示された。重篤な皮膚病変や治療の変更につながった患者はいなかったが、有害事象の情報を多職種チームで共有する必要性が示唆された。7月13日から15日に名古屋で開催された第66回日本消化器外科学会総会で、朝日大学歯学部附属村上記念病院外科、秋田大学大学院消化器外科の久米真氏が発表した。

 大腸癌に対する化学療法の進歩に伴い、患者の生存期間が延長するとともに、ストーマを造設した患者ではストーマケアに取り組む期間も長くなっている。

 ストーマ周囲の皮膚疾患も化学療法の有害事象である可能性があるが、皮膚病変は強い自覚症状を伴わなければ患者から訴えられる機会は少なく、生命予後に直結しにくいため、医師からは注目されにくい。

 今回の久米氏らの研究は、WOC(創傷・オストミー・失禁看護)ナースの提案によるもので、化学療法を施行中の1、2カ月間に、急激なストーマ周囲の色素沈着を認めた特異的な患者に焦点を当てた。同ナースらによる論文も発表された(J Wound Ostomy Continence Nurs. 2011;38(3):280-285)。

 久米氏らは、ストーマを造設した大腸癌患者のストーマ周囲の色素沈着の程度と患者背景を検討した。

 対象は、2003年4月から2006年3月までに、秋田大学医学部附属病院のストーマ外来を受診した大腸癌患者のうち、半年以上の経過観察を終えた14人(年齢64.9±11.8歳、男性8人)。疾患の内訳は、直腸癌11人、横行結腸癌、S状結腸癌、肛門管癌が各1人だった。

 この時期はFOLFOX導入以前であり、S-1がステージIIIbまたはIVの患者5人(全例男性)に投与されていた。

 色素沈着の有効な国際的スケールがなかったため、「色素沈着なし」をグレード0、「すこし濃い」をグレード1、「非常に濃い」をグレード2と分類した。

 S-1が投与されていた5人全員にパウチ装着部位に色素沈着を認め、4人はグレード2、1人はグレード1だった。S-1が投与されなかった9人では、グレード0が7人、グレード1が2人だった。

 色素沈着は女性より男性に多い傾向がみられたが、久米氏は「S-1の投与が男性のみであったバイアスがある」とした。また癌の進行度が高いほど色素沈着は強い傾向がみられた。

 患者をS-1が投与されていた群と投与されなかった群に分けて比較すると、ストーマの周囲皮膚の色素沈着はS-1が投与されていた群で有意に高度であった。

 今回の対象では、ストーマ周囲の色素沈着が重篤な皮膚病変に進行したり、治療の変更を要した患者はいなかった。

 しかし、ストーマ周囲の皮膚は、5-FUなどによる化学療法や放射線療法の有害事象、ストーマケアや外力などのストーマ局所の要因、内分泌や代謝、栄養状態などの生理機能、腫瘍随伴症候群などを反映する。そのため、ストーマ周囲の皮膚疾患により、今後の治療計画の見直しや薬剤の変更、投与量・スケジュールの調整が必要になることも考えられる。

 久米氏は「特に抗癌剤では治療安全域が狭いため、有害事象の情報には敏感でなければならない」と話し、ストーマ周囲の状態についてはWOCナースが観察した情報を多職種チームで共有し、医療の質を向上させる必要があるとした。