臨床病期(cStage)がIからIIIの切除可能な食道癌に対する手術療法と化学放射線療法(CRT)の予後の比較から、手術療法の優位性が示され、特にcT3またはcStageIIIで顕著であった。ただし、cT1b・cT2かつcN0の患者では、治療法による成績の差がなく、手術療法と同様にCRTは初回治療で第一選択肢となる可能性も示された。7月13日から15日にかけて名古屋で開催された第66回日本消化器外科学会総会で、群馬大学大学院病態統合外科学の鈴木茂正氏が発表した。

 食道癌治療のアルゴリズムでは、ステージI、II、III(T1b〜T3)に対し外科治療とCRTが併記されている。食道癌に対する化学放射線療法は、治療成績の向上から、近年では他臓器浸潤や切除不能な症例だけでなく切除可能な症例にも選択されることが増えている。しかし、化学放射線療法ではどのような症例が好ましいのかは明らかになっていない。

 鈴木氏らは、切除可能食道癌に対し、手術療法を行った症例と、根治目的でCRTを行った症例の予後を検討した。

 対象は、食道癌のcStage IからIII(cT4を除く)の患者334人。OPE群は1997〜2009年に手術療法を治療の主体とした216人(うち男性198人)、CRT群は1997〜2007年に根治目的で化学・放射線療法を行った118人(同98人)だった。

 OPE群は、手術先行症例206人、術前治療症例10人で、2領域リンパ節郭清は62人、3領域リンパ節郭清は154人に行われた。一方、CRT群にはサルベージとして行われた14人が含まれ、CRTは57人、放射線治療単独(+腔内照射併用)は61人に行われた。CRTの主なプロトコールはドセタキセル(TXT)+シスプラチン(CDDP)+5FU、CDDP+5FU、ネダプラチン(CDGP)+5FU、TXTで、総線量は52〜70Gyだった。

 全例の5年全生存率(OS)はOPE群57.2%、CRT群37.4%、原病5年生存率(disease specific survival)は63.0%と52.4%で、いずれもOPE群で有意に予後良好だった(p=0.0002、p=0.0223)。

 ステージ別の予後は、cStage Iの5年OPE群で有意に良好だったが、原病5年生存率に有意差はなかった。cStage IIでも同様だった。しかし、cStage III(T4を除く)の5年OSはOPE群42.3%、CRT群14.7%、原病5年生存率は45.7%と19.4%で、いずれもOPE群で有意に良好だった(p=0.0016、p=0.0031)。

 深達度別による予後は、cT1bの5年OSはOPE群で有意に良好だったが、原病5年生存率では有意差はなかった。cT2ではいずれも有意差はなかった。しかし、cT3の5年OSはOPE群42.4%、CRT群15.1%、原病5年生存率は49.7%と20.8%で、いずれもOPE群で有意に良好だった(p=0.0004、p=0.0015)。

 リンパ節転移の有無による予後は、cN0では5年OSはOPE群65.2%、CRT群49.9%で、OPE群で有意に良好だった(p=0.0074)が、原病5年生存率は73.8%と69.2%で有意差はなかった。これに対し、cN(+)の5年OSはOPE群49.2%、CRT群16.8%、原病生存率は52.2%と24.9%で、いずれもOPE群で有意に良好だった(p=0.0002、p=0.0017)。

 OPE群に治療関連死はなく、他病死は9人で、脳血管疾患や他の癌による死亡などだった。一方、CRT群では治療関連死が3人で、内訳は食道穿孔、心不全、肺炎が各1人だった。他病死は21人で、心疾患、呼吸器疾患、他の癌による死亡などだった。

 鈴木氏は「手術療法の優位性が示唆され、基本的にCRTは耐術能が不十分な患者、あるいは十分に情報提供されたうえで手術を希望しない患者の選択肢であると考えられる」と話した。